『剣と魔法とたいやきと』

作・無能  
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第二回「ランナウェイエンジェル?!」

 1

「実は…すごくお腹がすいていたんだよ〜」
「それで?」
「それだけ」
「……」
「……」
 全然長くなかった。しかも、複雑でもなかった。
「あっ、そうだ!やっぱりたい焼きは焼きたてが一番だよね」
そう言うとたい焼きをひとつつまみ出す。
(…すでに俺の言葉は耳に入っていないな)
「…やっぱり、事情を説明して、返した方がいいんじゃないか?」
「でも、たい焼きは焼きたてが一番おいしいって・・・」
「うまくても食うな!」
「うぐぅ…」
「うぐぅ…」
「うぐぅ…まねしないでっ!」
「うぐぅ…」
「……」
 とりあえず、からかうと面白いということが分かった。
「ま、負けた…。俺にはうぐぅを使いこなすことができなかった…。
うぐぅはお前だけのものだ!」
「……」
…どうやら本気で怒らせてしまったようだ。
「すまん、さっきからずっと使っているから…」
「うぐぅ…そんなことないもんっ!」
「…悪い冗談だった」
「本当?もう言わない?約束だよっ」
「ああ。しかし、金はちゃんと払った方がいいぞ」
「お金持ってるときにちゃんとまとめて払うもん」

[(注)それでも犯罪です。マネをしないように(笑)〕

「…まぁ、それっだたらいいけど」
「うんっ!」
さっきまでの拗ねた表情から一転、満面の笑顔だった。
ころころと表情が変わって、見ていてとてもおもしろい。
「だから、はいっ。ボクからのおすそわけだよっ」
「…まあいいか。え〜とっ…」
そういえばまだ名前をきいていなかったな…
「あゆだよ」
不意に女の子が顔を上げる。
「月宮あゆ」
「俺は祐一だ。相沢祐一」
俺は前にあゆと会ったことがあるような気がした
「祐一君、どうしたの?」
「いや…なんでも」
「まっ、いいや。でも、そろそろ帰らないと…」
気がつくと周りには人影も無く、もう暗くなり始めていた。
この街には夜になると魔物が大量に出現するので、一般人だったら危険な時間が近づいている。
あゆはそのことが言いたいんだろう。
「これでさよならだねっ」
「そうだな。」
「また会えるといいねっ」
「…いいのか?」
「うぐぅ…いいんだよっ」
「そうだな、会えるといいな」
「うんっ」
笑顔で頷いて、そのまま元気に手を振って走っていく。
傾いた夕日のなかで、赤く染まる背中の羽が印象的だった・・・。
「さて、俺も宿屋に帰るか・・・って、
ここはどこなんだ〜!」
赤く染まった人影のない街に俺の声がむなしく響いていた・・・。
 そんな俺は後ろからいきなり声をかけられた。
「どうしたんだい?そろそろ帰らないと魔物が出てくるぞ?」
振り向くといつのまにか青年が立っていた。
「あんたはいったい・・・」
「いやー、どうやら道に迷ってしまったみたいでね。君もかい?」
「ああ」
「おたがい無事に帰れるといいな。じゃあな!」
そういって街人Mは路地裏のほうに入っていく
「ちょっと待ってくれ!」
俺は急いでその路地裏に入ったが、そこには誰もいなかった。
「何だったんだろう?俺はまだ聞きたいことがあったのにな…」
この街は謎が多すぎる・・・俺は心の底からそう思った。

 2

同時刻  ある屋敷にて

トントントン

…うーん、眠っていたみたいだ…まだ眠い…

トントントン

「あはは〜っ、佐祐里ですよ〜。浩之ちゃん〜」
…誰だ!誰なんだ?禁句言うやつは!
「浩之ちゃ〜ん!おきてよ〜。ひ・ろ・ゆ・き・ちゃ〜ん!」
「・・・」
「浩之ちゃ〜ん!早く起きないと遅刻しちゃうよ?」
「あれほどいつも『浩之ちゃん』と呼ぶなと言っているだろ。
しかも、お前はあ〇りか?俺はこんな世界は認めないぞやり直しだ!やり直しを要求するっ!!」
<なんて我侭なヤツだ。こんなところで駄々をこねられても話が進まんじゃないか。しょうがない今回だけだぞ…>


  ポチッとな


 2

同時刻  ある屋敷にて

トントントン

…うーん、どうやら眠っていたみたいだ…まだ眠い…

トントントン

「あはは〜っ、佐祐里ですよ〜。ひろ兄様いらっしゃいますか?」
誰かが呼んでいる。しかし、まだ・・・・・・
「もしかしてまだ寝ています?」
「佐祐里・・・寝ているようだ。中に浩之の気配を感じる・・・」
どうやら妹達のようです・・・『あはは〜っ』が口癖の人なつっこい佐祐里と、
無口でマイペースな舞だ。
ついでに私の自己紹介もしておきます。私の名は浩之。
絶対に『浩之ちゃん』と呼ばないように。
私には妹が二人いる。
佐祐理と舞です。佐祐里は実妹ですが、舞は義妹です。
……そうですね。舞が家族の一員になった時のことを話しましょう。
 10年前に魔物の大量発生が起きたときに、腕利きのモンスターハンターだった舞の両親はハンティングに行ったきり帰ってこなかった。
 しばらくして、舞の両親は無残な姿で発見された。
手足はバラバラにされ頭は何物かに持ち去られていたが、近くに落ちていた武具や装備していた鎧、体についてある傷あとからわかったらしい。
しかも、その体からは血が抜きとたれていたそうだ。
そんなこともあり、まだ幼かった舞を引き取る親戚がいなかった。
 後から聞いた話によると、舞はこのときからすでに不思議な力をもっていたらしい。
 そんな舞を、私と佐祐里の父上は養女として引き取った。
反対がなかったわけでもないが、親友の娘を見捨てることができなかったのだろうと私はそう思う。
 ここに来てすぐのときは舞は泣いてばかりでしたが、年が近かったおかげでいつのまにか仲良くなっていた。
 そのとき、私達は『この街でモンスターによる被害をなくそう』と約束をしている。
 それから私は魔術師として、佐祐里は神官戦士として、舞は剣士としての修行に励んだ。
今では、ハンターギルドのA級に所属している。ただし三人そろっていて、だ。
一人一人だと、舞はC級、私と佐裕里はD級くらいの実力しかない。
 ついでにいうとギルドには数多くの階級があり、
大きく分けて上から,,,,,,F,G,となっている。
だいたいこんなものですか……
…んっ?まだ、何か言っていますね…
「あははーっ、兄様、起きてください〜。このままだと遅刻してしまいますよ〜。」
「…早く起きて…浩之」
そうですねもう起きないと・・、しかしもう少しだけこのまま寝させて欲しい……
「…あと五分…ほど……眠らせて…くれないか?」
「あはは〜っ、ダメですよ兄様。」
「・・・」

ドスッ

「ぐはっ」
…痛いです。頭に手刀の一撃を食らいましたね。
(浩之は26のダメージを受けた)
「……起きたか?浩之。メガネ…」
「…ありがとう、舞」
…起こそうとして叩くのはいいですが、もう少し手加減して欲しいです…。
 私は眼鏡をかけるとまわりを見回した。
 よく見ると舞も佐祐理も、完全武装?している。
武装と言っても、舞は動きやすい服装に剣を持っているだけなんですが。これは、まだいいのですが…
佐祐理にいたっては……なんて言うべきでしょう?
普段着ているような服装ではなくて…どこかの学校の制服みたいな服を着ていて、右手には大きな水晶がついた杖を持っています。
杖の先についている水晶から羽がはえています。
「兄様、そろそろ仕事の時間ですよ〜。」




  続く


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