『剣と魔法とたいやきと』

作・無能  
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第1話 出会い

「ふぅ・・・いったいこの街はどうなっているんだ?宿屋で言われた通りに地図を借りた方がよかったか・・・」
立ち止まっても仕方が無いので歩き始めた。
(散歩ついでに剣を買い換えようと思ってたんだがな・・・)
「そこの人っ!」
「・・・えっ?」
突然の声に驚いていると、
「どいてっ!どいてっ!」
状況がわからないまま、気がつくとすぐ目の前に女の子がいた。いた・・・というか、走っている。 小柄で背中に白い羽の生えた女の子だった。たぶん鳥人族なんだろう。
「うぐぅ・・・どいて〜」
(・・・って、おい!このままじゃあ・・・)

べちっ!

「うぐぅ・・・痛いよぉ〜」
(・・・やっぱし避けれなかった。こんなときは絶対に避けることができないという法則かなにかがあるのか?)
「ひどいよぉ・・・避けてっていったのにぃ〜」
「悪い。とっさの出来事で対応できなかった。」
「うぐぅ・・・本当に・・・?」
潤んだ瞳で俺の顔を見上げる。
「本当に悪い。まさかそのままの勢いで体当たりをするとは思わなかった」
「うぐぅ〜」
鼻を押さえたまま、とりあえず立ち上がって体勢を立て直す。そして・・・。
「・・・あっ!」
思い出したように後ろを振り返る。
「と、とりあえず話はあとっ!」
「・・・え?」
俺の手を掴んで、そのまま引っ張るように走り出す。
「ちょ、ちょっと待てっ!」
「待てないよ〜っ!」
人混みをかき分けるように、奥へ奥へと入っていく。俺の手を掴んだまま・・・。
「いったい何がどうしたんだ?」
「追われているんだよ・・・」
時折背後を振返りながら、必死の表情で街を走る。
「・・・追われているって?」
「・・・・・・」
それっきり口を閉ざす。
それ以上問いただすこともできずに、俺は引かれる
ままに街を走り抜けていった。
どこをどう走ったのか分からない。
ただ、視界に飛びこんでくるのは少女の背中と、その背中についた羽だけだった。

「こ、ここまで来れば、大丈夫、だよね・・・」
膝に手をつきながら、はぁ、はぁ、とかたで息をついている。
「大丈夫も何も、とりあえず事情を説明してくれ」
同じように息を吐きながら、少女に問い返す
「・・・・・・」
問われた少女が、じっと俺の顔を見つめていた。
年齢は俺よりもずいぶん下だろうか?
どこか幼さを残したような、小柄な女の子だった。
「・・・・・・」
しばらく黙り込んでいた少女が、ゆっくりと口を開く。
「・・・追われているんだよ」
神妙な表情で、さっき確かに聞こえた言葉をもう一度繰り返す。
不安げに背中の羽がパタパタと揺れていた。
「追われれいるって、誰に?」
「それ以上はボクの口からはいえないよ・・・。
無関係の人を巻き込みたくないからね」
(人をこんな所まで引っ張っておいて、無関係も何もないと思うが・・・)
「その持っている袋と何か関係があるのか?」
女の子は、最初にぶつかった時からずっと大切そうに紙袋を抱えていた。
「ぜ、ぜ、ぜんぜん、そ、そ、そ、そんなことないよっ!」
「関係あるんだな」
「ええっ! う、ううん、か、関係ないよっ!」
どもりながら、紙袋を胸元で抱えるように少し後ずさる。
(なんて分かりやすい・・・)
「まぁ、言いたくないんだったら別にいいけど」
(どうせ、俺には直接関係のないことだろうし・・・)
「・・・あ!」
「・・・どうした?」
「ごめんね、話はあとっ!」
「話はあとっ、じゃない!」
引っ張る腕を逆に引き寄せる。
「うぐぅ・・・放してよ〜」
「走る前に事情を説明しろ」
「でもっ、でもっ!」
切羽詰ったようにあたりをきょろきょろと見回している。
「うぐぅ・・・と、とりあえずこの中に入ろっ!」
すぐ横の武具店を指さす。
この中に逃げ込みみたいらしい。
「よく分からないが、誰かに追われているんだな?」
「うんっ」
「わかった」
掴んでいた手を離す。
「うぐぅ、ありがとぅ〜」
手が離れると同時に、店の中に走っていく。
「さってと、そいつを相手にするか・・・って、あれ・・・・・・剣がない〜!?」
(そういえば前の剣は折ってしまったんだよな・・・ゴブリン相手に・・・)
「しかたがない。逃げるとするか」
俺もその背中を追って中に入る。
「早くっ、早くっ!」
先に入った女の子が、入り口のドアから手招きしている。
「いらっしゃいませ!」
店に入ったら元気そうな声が聞こえた。
「何か買うのか?」
「普通のお客さんを装うんだよっ」
[(注)ちなみに、店に入るなり商品を見ずに窓から外の様子をうかがっているふたり組が普通の客に見えるかどうかは微妙である。]
「ねぇ、シャノン兄ぃ。あのふたり変だよ?外に追い出そうよ」
「・・・勝手にしろ。」
「私はシャノン兄に頼んでいるの!!(怒)」
「・・・面倒くさい。」
「どうしてそうシャノン兄は何でもかんでも面倒くさがって、
二言目には『面倒くさい』ばっか!」
「・・・あのな」
どうやら店番をしているのは兄妹らしく、面倒くさがりの兄としっかりしている妹はよくけんかをするらしい。
「・・・なんなんだろうね」
「さぁ? とりあえずは追い出される心配はなくなったな」
そう言って俺は苦笑した。
「・・・あっ!」
少女の表情が強ばり、紙袋を抱える手にも力が入っていた。
どうやら追いかけてきている奴が、店の前に来たらしい。
(どんなやつなんだ・・・?)
窓からすっと外を除き見る。
沈みゆく夕日に照らされて、ひとりの男が立っていた。
薄くなった頭に、人のよさそうな温和な表情。そして、なぜかエプロン姿・・・。どこから見ても普通のおやじだった。
「・・・お前を追っているのって、あの人畜無害そうなおやじか?」
「・・・そうだよ」
じっと息を潜めながら、搾り出すように呟く。
「俺にはただのおやじにしか見えないが・・・」
「人は見かけで判断したらダメだよ・・・」
「・・・まぁ、そうだけど」
確かに、エプロン姿というのがそこはかとなく怪しい雰囲気を醸し出しているといえなくもないかもしれない・・・。
「・・・・・・」
やがて、一通り辺りを見回したエプロン姿のおやじは、さすがに諦めたのかそのまま来た道を引き返していった。
それを確認してから、
「うぐぅ・・・怖かったよ〜」
(・・・そうか?)
「あ、そうだちょっと待っていてくれ。いい武器がないか探したいから」
「武器を探していたの?それなら、一緒に探そうよ!」
そう言うとパタパタと駆け出していった。
(なかなか健気なやつじゃないか…ん?)
「・・・ちょっと待て、俺が何を探しているのか聞かないのか?」
「うぐぅ、早く言ってよ」
俺は確信した。こいつは変なヤツだと・・・
「剣だ。片手でも、両手でも使うことができるようなのを頼む」
「バスタードソードを探せばいいんだね!」
「・・・ああ」

数分後

しばらく探してみたがなかなかいいものが見つからない。
「うぐぅ、みつからないよぉ」
「うーん、そうだなぁ」
そう言いながら、ふと顔を上げると片刃剣が壁にかけてあった。
「すいませーん。あの剣は」
「すいません、あれは父さんの形見ですから・・・」
「それは残念・・・。って、あれ?声が女の人になってる・・・」
目の前にいたのはさきほど「シャノン兄」と呼ばれていた男性のはず…
「あぁ〜、向こうにいるのはシャノンとパシフィカなんです。シャノンとは双子なんですよ〜。あっ、わたしはラクウェルといいます」
どうやら、三人兄姉妹(きょうだい)だったようだ
シャノンは人生に疲れたような雰囲気が、良くも悪くも似合っている青年だったが、ラクウェルはずっと幸せそうな顔をしている。ただ見ているだけで根拠のない幸福感がじわじわと伝染してきそうな雰囲気がある。
「あの〜、私の顔になにか・・・?」
「「す、すいませ〜ん。」」
俺達はあわてて店を出た。
「あの人、美人だったね」
「なんだ見とれていたのか?」
「うぐぅ、いいじゃない」
「しかし、あのおやじ、どうしてエプロンなんかしていたんだ?」
「たぶん、たい焼き屋さんだからだよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・どうしてたい焼き屋がおまえを追いかけて来るんだ?」
「・・・それは」
言いづらそうに、俯いてもじもじしている。
「えっと・・・大好きなたい焼き屋さんがあって・・・たくさん注文したところまではよかったんだけど・・・」
何となく、話の雲行きが怪しくなってきたような気がする・・・。
「お金を払おうと思ったら、財布がなくて・・・。それで走って逃げちゃったんだよ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・もしかして、お前が一方的に悪いんじゃあないのか?」
「うぐぅ・・・仕方なかったんだよ〜」
「どう仕方なかったんだ?」
「話せば長くなるんだけど・・・」
「どうせ時間はあるから、気にするな」
「複雑な話なんだけど・・・」
「大丈夫だ」
「実は・・・」

       続く




次回予告
第2話 たい焼き屋の復讐(仮)


後書き

たい焼き屋 ちょっとそこのお兄さん。(ニヤリ)
    無能 わー。なんでしょうか?たい焼き屋さん。(汗)
たい焼き屋 代金を払ってもらいますよ。もし払えなかったら・・・分かっていますね。
    無能 払えなかったら・・・?
たい焼き屋 この包丁の切れ味、試してみたかったんですよ・・・
    無能 分かりましたっ!払います!払わせてください!・・・あっ、財布が・・・・ではっ!

       ー走り去る音ー

たい焼き屋 ・・・あなたもですか。残念です。それでは行きますよ!バイ・ラ・ウェイ!!

       ―風を切る音―

    無能 何っ!?、衝撃波を飛ばせるとは・・・ぐふあっ
たい焼き屋 ふっふっふっ、赤い死神直伝ですよ
    無能 なぜ包丁で・・・騎士剣でないとだせないはずでは?
(注 騎士剣・・・馬に乗った騎士を馬ごと切る剣。斬馬刀の西洋版だと思ってください)
たい焼き屋 フォースのおかげです。これ以上生かしておくとネタばれしますので 斬!!
    無能 メインキャラに名前がないのに・・・
たい焼き屋 自業自得ですよ。殺!
    無能 あうぅ〜〜っ
たい焼き屋 殺!殺!殺っ!!
    無能 ・・・・・・。
たい焼き屋 ようやく黙りましたか。では、またいつか・・・


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