ツチアケビ 07.10.30




山に実った赤バナナ



 薄暗いスギ林の中に、まっ赤なものが目を引きました。近づいてみると、房状に赤いバナナかソーセージにそっくりな実をたわわに付けた植物がすっくと立っていました。「ツチアケビだ・・・」ぽつんとひとこと発しただけで、瞬きもせずに見入ってしまいました。それにしても、見れば見るほど奇妙な植物です。

 こちらの写真は、他の場所で見つけた6月のツチアケビ です。ここを通るたびに“パー”や“チョキ”を出してジャンケンをしたくなるような、にぎりこぶしによく似た花芽を付けています。
 「なんでこんなに奇妙なんだろう?」改めて写真をながめると、答えは案外簡単に出てきました。そうです、ツチアケビには葉っぱがありません。ニョキッと地面から頭をもたげたのっぺらぼうのようなツチアケビでも、葉っぱの5、6枚でも付いていれば、それなりに形になるはずです。
 調べてみると、ツチアケビに葉っぱがない理由がよくわかりました。「葉っぱがない」と言うよりも「葉っぱを持つ必要がない」と言った方が正確です。通常、植物は葉っぱで光合成をして養分を作り出していますが、このツチアケビは光合成をせず、ナラタケの菌と共生して養分を得ているというのですから驚きです。

 それにしても、この果実は見事です。1本だけ拝借して果実の中を見てみることにしました。カッターナイフから伝わる印象は意外と柔らかで、す〜っと上から下まで軽く切り分けることができました。茶色いつぶつぶのひとつひとつが種で、拡大してみると種の周囲には幕があり、UFOのような形をしています。これはより遠くまで種を飛散させる工夫なのでしょうか。
 「ひょっとして食べられるかも・・・」果実に顔を近づけましたが、そのすえた臭いに口まで運ぶ勇気がありませんでした。

 何から何まで変わり種の“ツチアケビ”。いつかまた、思いがけない場所でバッタリと出会いたいものです。

文責 増田 克也

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