ツマグロヒョウモン 07.10.16




田舎から都会へ



 小春日和の柔らかな光に包まれた午後、“ツマグロヒョウモン”に出会いました。なんだか聞き慣れない難しそうな名前ですが、“名は体を表す”とはよく言ったもので「ツマグロ=前羽の先が黒く、ヒョウモン=オレンジ色の地に黒の豹紋がある蝶」と覚えてしまえば、出会ったときに首をかしげなくてすみますね。

 花の側に座り込み静かにしていると、警戒心を解いてツマグロヒョウモンの方からこちらに近寄って来てくれました。
 まず、気に入った花にとまると、内向きにクルリと巻いたストロー状の口を伸ばし始めます。くの字型に伸びた口は、蜜がありそうな場所に入れたり抜いたり、あちらこちらと絶えず忙しく動かしていす。遠目には優雅に食事をしている様に見えたツマグロヒョウモンですが、実際はこんなにせわしない食事をしていたとは新たな発見でした。
 次に全開にした羽を上から見てみると、名前の由来になった模様がはっきりとわかります。黒の小さなドット一つ一つも、寸分狂わぬシンメトリーとなり美しい限りです。
 正面から見てみると、「やっぱり蝶々も昆虫だ」と感じさせる迫力ある面構えです。驚いたことに眼までもが神秘的な豹柄で、その上、触角の先端にもオレンジ色を配しています。ツマグロヒョウモンにはアゲハチョウのような豪華さはありませんが、いったいどこまでおしゃれなんでしょう。

 ツマグロヒョウモンの幼虫はスミレだけを食べて成長する特徴を持っています。南但馬自然学校の周辺では野生のスミレが自生しているので、ツマグロヒョウモンも普通に見られる蝶ですが、よほどスミレなどに縁がなさそうな都市部でも、近年、ツマグロヒョウモンが見られると言うのです。その謎をひも解くと、このところのガーデニングブームで庭やプランター等に植えられる、パンジーやビオラに代表される洋物のスミレをツマグロヒョウモンはちゃっかり利用しているようです。本来、南方系の蝶ですからヒートアイランドも都会への進出に一役買っているのでしょう。
 都市部にお住まいでパンジー等が近くにある方は、黒地に赤のラインが1本入ったツマグロヒョウモンの幼虫を探してみてはいかがでしょうか。

文責 増田 克也

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