トビ 06.12.26





良縁は木の上で



 上の写真は、南但馬自然学校からヒメハナ公園へ、サイクリングやハイキングに出かける子どもたちがいつも目にする風景です。ともすれば,、どこにでもある田園風景ですが、竹藪の中から伸びた大きなケヤキの木に、ゴマ粒のようなものがいくつもくっついているのが見えます。これはいったい何でしょう? それでは、もう少し近寄ってみましょう。どうやら、鳥がとまっているようですが、遠すぎて種類まではわかりません。驚かせないようにゆっくりそ〜っと近づくと・・・みなさんもよくご存じの“トビ”でした。トビが1本の木にこんなにたくさん集まっています。後で写真を見ながら数えてみると、木には73羽、左の飛んでいるものを加えると75羽が集合しています。トビは冬になると、一カ所に集まる習性がありますが、それはいったいなぜでしょう? 答えは後にして、まずトビの紹介をしたいと思います。 

 トビは私たちの身近な野鳥です。日本では沖縄県を除く全土に分布し年中見ることができます。大きさは翼を広げると150〜160p以上もあります。これは小学校高学年の平均身長と同じくらいですから、かなり大きな野鳥です。この大きな翼で、ほとんど羽ばたきをせず、空を滑るように飛ぶことができます。天気のいい日に上昇気流に乗って円を描き、空高く舞い上がる姿は見ていて気持ちがいいもので、小学4年生に習った“とんび”という歌をいつも思い出します。
 普段は穏やかな優しい表情をしているトビですが、エサを狙うときには一変して精悍な顔つきになり、ワシやタカの仲間であることを思い出させます。では、そのエサはというと、生きた獲物を狩ることは少なく、動物の死骸や捨てられたゴミや残飯をあさっています。
 この習性が災いしてか、ワシやタカより下等なものとみなされ「鳶(トビ)が鷹(タカ)を生んだ」「鳶(トビ)の子は鷹(タカ)にならず」など、ありがたくないことわざができたようですが、死骸などを食べ、きれいに掃除をしてくれるトビは、自然界にはなくてはならない存在です。
 
 それでは話を最初に戻して、トビが集まる訳をお話しします。冬になるとトビたちは一カ所に集まって、結婚相手を捜しているのです。たくさん集まっていますから、つまり“集団見合い”ですね。そしてトビたちが集まったケヤキの木は“お見合い会場”ということになります。冬の間に相性のいい相手を見つけてカップルになり、春には結婚の運びとなります。

 お見合いの様子を少しのぞいてみましょう。ほら、トビたちの会話が聞こえてきそうですよ。「ねぇ見て見て、あそこにいる人かっこいいじゃない。私のタイプかも・・・」「もう〜聞いてるの!お見合いの最中にトイレなんて失礼ね!」とでも言っているのでしょうか。
 ただ静かにたたずむトビたちは、きっと私たち人間にはわからない言葉でやり取りしているのでしょうね。

文責 増田 克也
  
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