タマゴタケ 06.07.25





玉子から生まれたキノコ



 梅雨が終わりに近づき長雨が続いていますが、雨のやみ間に外へ出てみると、おもしろいキノコたちが顔をのぞかせていました。それでは梅雨明け間近の南但馬自然学校でキノコを見てみましょう。

 きつねコースの林に入ると松枯れしたアカマツの幹に、表面がツヤツヤしたキノコがたくさんついていました。栗まんじゅうのようなかわいい姿に見とれてしまいますが、このキノコは食べられません。名前は“ヒトクチタケ”といいます。名前の由来は、「おいしそうなので“一口だけ”食べたい・・・」ではありません。ヒトクチタケを下からのぞいてみると、小さな穴がひとつ空いています。これを口に見立て、ヒトクチタケと名付けられたようです。

 次にむささびコースの途中で、奇妙な形のキノコを見つけました。まるで地面からニワトリの足が突き出ているように見えます。初めて見たときには、これがキノコなのかとしばらく首をひねったほどです。これほど個性的なスタイルをしているのだから、名前を調べるのは簡単だと思い図鑑を開きましたが、私の図鑑には載っていませんでした。そこで、キノコに詳しい方に伺うと・・・アカカゴタケ科の“サンコタケ”とわかりました。
 形はユニークですが、匂いはいただけません。むかつくような臭気が鼻を突きます。この匂いも虫たちには魅力的なのか、しみ出したチョコレートのような黒い汁に、入れ代わり立ち代わり虫たちが訪れていました。

 くまコースでは上の写真の赤いキノコが顔を出していました。名前はタマゴタケといいます。「あれっ、真っ赤なのにどうして玉子?」と思いませんか? それでは謎解きをします。地中から頭をもたげた写真を見てください。これで納得してもらえましたね。私には玉子というより、おにぎりに見えるのですが・・・それはさておき、この白い玉子の殻を破って中から真っ赤なキノコが顔を出します。その後は半日ほどで傘が開き、1週間も経てば跡形もなく朽ちてしまいます。キノコの生命は短いものです。
 私はタマゴタケが出るのを、楽しみにしています。色や形が気に入っているのはもちろんですが、そのほかにも食べられるのが大きな魅力です。一番簡単な食べ方は、傘や軸を手で裂いて軽くソテーすればできあがりです。味はとんでもなくおいしいとまではいきませんが、キノコ特有の風味を持っています。物珍しさも手伝って、このところ毎年のようにいただいています。
 ただし、キノコを食べるのは注意が必要です。実際に有毒のベニテングタケやドグベニタケをタマゴタケと間違えて食べ、食中毒を起こしたという新聞記事を毎年目にします。キノコの判別によほどの自信があるか、専門家に判断してもらわない限り口にするのは慎むのがよいでしょう。
 
 今年は但馬各地でキノコが豊作だと聞きます。南但馬自然学校でもこれから秋にかけて、一雨ごとに様々な色や形のキノコに出会えます。名前はわからなくても、見ているだけでどこか幸せな気分にしてくれるキノコたち、今年も目が離せませんよ。

文責 増田 克也

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