タゲリ 08.01.08




12年ぶりの再会



 年の瀬も押し迫った昨年12月25日のこと、冷たい雨が降る南但馬自然学校周辺の田んぼに7羽の“タゲリ”がやって来ました。タゲリはハトほどの大きさの野鳥で、チベットや中国などから越冬のためにやってくる渡り鳥です。同じ但馬地方でも、北部の豊岡市辺りでは毎年のように姿を見せますが、広い田んぼや湿地などが少ない、山地の本校周辺では大変珍しい存在です。記録を調べると、1996年の冬に姿を確認してから実に12年ぶりの再会でした。

 12年間ご無沙汰してもタゲリには決して忘れられない特徴があります。それは頭のてっぺんからピンと伸びた冠羽(かんう)と呼ばれる“ちょんまげ”です。その辺りを見回してもこんなユーモラスなちょんまげを待った野鳥はそうそういません。
 それに羽の色も味わいがあります。青とも紫とも言い難い金属のような深い光沢が、タゲリが動くたびに変化し、いつまで見ていても飽きることがありません。
 エサを捕る仕草もユニークです。置物と見間違うほどにピッタっと動きを止め、ひたすら地面に目を凝らします。次に、虫やミミズを見つけると「スタスタスタッ」と足早に駆け寄り素早く捕らえます。この動作を何度も繰り返す姿は、まるで“だるまさんが転んだ”を見ているようで思わず微笑んでしまいます。

 2008年元日の夕方から南但馬地方は初雪となり、翌2日は日が差し込んだかと思えばまた吹雪く、めまぐるしい天候で南但馬自然学校の朝来山も雪化粧をしました。
 タゲリたちの様子が気になり田んぼへ向かうと、そこには風上に身体を向け雪に埋もれそうになりながら吹雪に耐える姿がありました。雪の中で微動だにしなかったタゲリですが、散歩をする人の接近には耐えられなかったようで、「ミュー」と子猫のような鳴き声を残して一斉に飛び立ちました
 
 12年ぶりに再会した7羽のタゲリたち、「このまま当地で越冬してくれるのだろうか」そんなことを思いながら吹雪の空にみるみる小さくなるタゲリたちの姿を見送りました。

文責 増田 克也

 
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