スギ 07.03.06





憂鬱な季節



 現在、スギ花粉症の患者は人口の10%を超えたと言われています。もはやこれは国民病と言っても差し支えないでしょう。南但馬自然学校でも例に漏れずスギ花粉に悩まされている職員が多く、その内、何名かは室内でもマスクを手放せない状態です。

 今年は暖冬の影響でしょうか、いつもの年よりスギ花粉のピークが早く感じます。例年は、テレビ等で花粉の飛び始めが報じられても、朝来山のスギの雄花は固く閉じています。ところが今年はどうでしょう。2月上旬より徐々に雄花が熟し始め、3月に入ると大量の花粉を飛ばしています。今年は特に花の付きがよく、花粉をたくさん蓄えた雄花が重たそうに垂れ下がり、風が吹くのを今や遅しと待ちかまえているようにも思えます。
 そんな雄花を見ていると、いたずら心がムクムクと頭をもたげ、指先で“ピン”と弾いた途端に、予想していたより多くの花粉が勢いよく飛び出してきたのには驚きました。指で弾いただけでもこれですから、ひとたび強い風が吹き、黄色味かかった花粉が山全体から煙のように立ち上る光景は、山火事と間違えそうになるほど凄まじいものです。現在、ピークを迎えた朝来山のスギ花粉も、今月末には治まるものと思われます。

 スギ花粉症のみなさんには、文頭から見苦しい写真ばかりで申し訳ありませんでした。それでは、お口直しに今の南但馬自然学校の様子を見ていだたきましょう。

 春一番に咲く“マンサク”が黄色い錦糸たまごをまぶしたような花びらを精一杯伸ばして咲いています。花を付けた隣の枝には去年の果実がカラカラに乾燥して残っていました。マンサクの根元には白いニホンジカの獣毛が落ちているのを見つけました。どうやらニホンジカも夏毛に着替え始めたようですね。
 毎春、マンサクと“早咲き”を競っているのはウメです。しかし、どんなにウメが頑張っても、到底マンサクにはかないません。ところが今年は、余りにも暖かい日が続いたので、マンサクと同時にキャンプ場のウメが咲き、白い花が開くと早速、“ニホンミツバチ”が蜜を求めてやってきました。
 ウメが咲くと気になるのが、やっぱりサクラです。そこで生活棟のサクラを見に行きましたが、花はまだまだ先のようです。ふと気づくと、足元には何やら、ゴミのようなものがたくさん散らかっています。これは“ウソ”がサクラの花芽を食べた跡です。冬にタニウツギやコバノミツバツツジを食べ尽くしたウソたちが、サクラの花芽を食べ始めたようです

 次に、近くの田んぼに目をやると、白い小さな花を咲かせた“タネツケバナ”が風に揺れています。この名前を漢字で書くと「種漬け花」となり、種もみを水に漬け、苗代の準備を始める頃に咲くところから名づけられたようです。
 田んぼの畦をピンク色に染めているのは“ホトケノザ”というシソ科の植物です。この花を拡大してみると・・・ほら、シソの花にそっくりです。
 ピンク色の畦の隣では、空の青さをそのまま映し込んだコバルトブルーの花を輝かせた“オオイヌノフグリ”が、やわらかな春の陽を小さな花びらいっぱいに浴びていました。

 この時期、スギ花粉症の方には耐え難い憂鬱な季節ですが外は“生まれたての春”にあふれています。マスクにメガネ、花粉対策を万全にしてフィールドに飛び出してみませんか。どうしても外に出られない方は、この「自然のページ」で雰囲気だけでも感じていただけたら幸いです。

文責 増田 克也
 
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