シロマダラ 06.10.31





幻のだんだらヘビ



 先日、とっても珍しい“シロマダラ”というヘビが見つかりました。南但馬自然学校には7種類のヘビが棲んでいますが、シロマダラには滅多に出会えません。本校に自然学校で訪れた、たつの市立新宮小学校の子どもたちが、キャンプ場に積まれている薪を運ぼうと持ち上げたところ、中からひょっこり出てきました。シロマダラにとっては雨風がしのげる絶好の隠れ家だったのでしょう。
 「キャンプ場にマムシがいる!」と、私に連絡が入り急いで駆けつけると、マムシに似ても似つかないヘビが団子のように丸まっておとなしくしていました。スマートな身体、白地に黒のぶち模様・・・これは「幻のだんだらヘビ」、シロマダラに間違いありません。

 シロマダラは、昼間は岩や葉っぱの下に隠れていて、暗くなると動き始める夜行性のヘビです。体長は30〜70pでトカゲやヘビを食べるようです。もとより数が少なく「シロマダラに出会えたら、宝くじに当たったようなものだ」とまで言う人もいるほどです。南但馬自然学校が開校して13年目になりますが、これで3度目の確認となりました。
 以前、出会った子ヘビは体長20pで身体の色も白っぽく感じましたが、今回のものは体長50p、少し赤みを帯びた立派なおとなのヘビでした。

 キャンプ場で寝ていたシロマダラを、団子のまま手のひらに包み込み事務室に待ち帰ったものの・・・「さて、どうしよう?」考え込んでしまいました。「ここでシロマダラを飼ってみたい」という思いが何度か頭をよぎりましたが、兵庫県のレッドデータブックにも載っている貴重なヘビなので、1日だけアクリルの飼育ケースの中で、子どもたちのアイドルになってもらい、その後は自然に帰すことにしました。
 飼育ケースから出し土の上に置いてやると、安心したのか団子がシュルシュルと解けて一本のひも状になり、スリムな身体を見せてくれました。先が2つに枝分かれした舌を何度も出し入れして、辺りの様子を伺っています。ヘビが舌を出すのは匂いを嗅いでいるのです。
 カメラのファインダー越しに見えるシロマダラは、他のヘビより美しく感じました。一枚一枚の鱗が、ワックスで磨きあげたような光沢を放っています。ヘビの感触を「ヌルヌル」と表現する人がありますが、これはウナギの間違いです。私は何度もヘビたちとふれあっていますが「ツルツル」という擬音がぴったりです。ヘビの中には毒を持つものや、気が荒いものもいますので、みなさんにはむやみに「ヘビとふれあってください」とは言えませんが、シロマダラのこの写真を見てもらえば、「ツルツル」という感触がわかってもらえると思います。
 別れ際には、身体を高く持ち上げ首をS字に曲げた威嚇のポーズまで披露してくれ、音もなく静かに茂みに姿を消していきました。
 
 今回、このシロマダラには、アイドルや写真のモデルにと忙しい思いをさせてしまいましたが、これからも南但馬自然学校のどこかで人知れずひっそりと暮らしてほしいものです。

文責 増田 克也

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