シメ 08.03.04




ひっつき虫もたじたじ



 先々週あたりから、シメという野鳥が姿を見せるようになりました。国内では北海道で少数が繁殖しているらしいですが、南但馬自然学校には冬にやってくる渡り鳥です。
 その姿はお世辞にも「可愛らしい小鳥」とは言えませんが、迫力ある太い身体人(鳥)相の悪い顔立ちは一度出会うと忘れることはできません。しかし、どうしてこんなに悪人顔をしているのでしょう。私なりに分析してみると、目からくちばし、喉にかけての黒いカラーリングに原因があるように思います。シメには「大きなお世話だ!」と怒鳴られてしまいそうですね。

 この日のシメは、折からの吹雪が容赦なく背中に吹き付けても動じることなく、草の実をひたすらほおばっていました。足下の実を半ば強引にもぎ取り「ツルッ」と丸呑みするかと思いきや、「もしゃもしゃ」と咀嚼するように何度かくちばしをかみ合わせ、喉の奥へ徐々に送り込みます。その食べ方は風体を裏切らず豪快そのものです。

 シメが食べているのは、オナモミという植物です。この実は強力な“ひっつき虫”で、先端がカギ状に曲がったたくさんの針が衣服や動物にくっつくと少々のことでは外れません。こうなるとオナモミの思う壺。知らず知らずのうちに運び屋に仕立てられ、オナモミの子孫繁栄に一役買うことになります。
 このオナモミも人や動物に取り付く機会を虎視眈々と狙っていたに違いありませんが、まさか食べられてしまうとは。シメの大きなくちばしにかかれば、流石のひっつき虫もたじたじです。

 ところで、どうしてシメはこんなにも熱心にオナモミを食べるのでしょう。オナモミの実には食用油の原料にされるほど、リノール酸が豊富に含まれています。そこで、最近、お腹回りが気になるシメがメタボ予防に・・・なんてことはあり得ない話ですが、シメとオナモミを見ていると愉快な想像はふくらむばかりです。

文責 増田 克也

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