朝来山 08.02.19




雪中自然散策



 2月13日、この冬一番の寒気が入り込み、早朝より除雪車がフル稼働するほど雪が降り続きました。翌日の14日は、朝から青空が広がり南但馬自然学校の朝来山は氷点下7度まで気温が下がったため、尾根の木々は白く樹氷で飾られました。こんな日はきっとおもしろいものが見られるはずです。そこで校内のフィールドへ雪中自然散策に出かけました。

 本校のシンボル、大屋根広場に吹き込んだ雪の上には、この辺りでは珍しくなったホンドギツネの足跡が緩いカーブを描きながら続いています。足跡をたどり大屋根広場を出て頭を上げると、遠く北西には粉砂糖をまとったガトーショコラのような竹田城跡がどっかと腰を据えていました。

 食堂棟の軒先には、つららがいくつも連なり、大きなものは約80pにも成長しています。午前10時をまわる頃、先端から銀色の雫を落とし始め、午後にはすっかり姿を消してしまいました。

 次に、山沿いにある生活棟方面へ向かいました。この辺りから“かんじき”が必要なほど雪は深くなり、登り坂を進むのは体力勝負です。斜面で立ち止まり息を整えていると、「フィーフイー」と口笛のような声が聞こえてきます。その声を見上げると、赤い襟巻きをしたオスのウソがサクラの花芽をついばんでいます。

 食事中のウソに遠慮しながら先に進んでいくと、見慣れない足跡が山に向かって延びています。足を揃えたまま、等間隔で残った跡に首を傾げましたが、以前に何度か見た、身体を伸縮させシャクトリムシのように進むテンの歩行を思い出しすぐに謎は解けました。

 雨の神様を奉る“雨乃宮の池”には氷が張り、木々から落ちた雪が降りかかっています。岸の拝み堂にも雪が吹き込み、飛行機のような野鳥の足跡が付いていました。その主は、形や大きさ、そして“ウォーキング”と呼ばれる左右を交互に踏み出す歩み方から、おそらくキジバトではないかと思われます。

 雨乃宮の池から生活棟の裏山に回り込み、いつも同じ場所にあるニホンジカの寝床を探しましたが、余りの積雪のためか今日は全く見あたりませんでした。「いったいシカたちはどこで寝たのだろう」などと考えながら自然観察館まで下りてくると、ヒイラギの木陰に地面がぽっかり露出した、大小2つの寝床が目に留まりました。大きさの違いはおそらく親子のニホンジカでしょう。昨日は比較的雪が少ない食堂棟のすぐ側で休んでいたようです。寝床を何度ものぞき込み、なぜかホッとしたような気分で雪中自然散策を終えました。

文責 増田 克也

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