ノビタキ 08.04.22




ノビタキ前線北上中



 粟鹿川(あわががわ)の桜が花開く頃になると、南の国からノビタキという野鳥がやって来ます。ノビタキは春に東南アジアなどから、南但馬自然学校がある近畿地方を通過し、本州中部より北の繁殖地(はんしょくち)を目指して旅をする渡り鳥です。
 今年、南但馬自然学校の周辺で、ノビタキを初めて確認したのは4月6日でした。その後、
数日で数はピークを迎え、そして今ではほとんど姿を見かけなくなりました。
 
 田んぼや畑を巡(めぐ)り幾(いく)つかのノビタキを見ていると、種類が違う野鳥かと思うほど羽の色に様々なタイプがあることに気付きます。
 夏羽に着替えたオスの胸は鮮(あざ)やかなオレンジ色。そして、頭から背中にかけての黒色は、まるでタキシードを着ているようです。オスと対照的(たいしょうてき)な淡い灰色のお腹と茶色の羽を持つのはメスです。他にも、オスとメスの中間のような色をしたものがいますが、これはちょうどタキシードに着替える最中のオス鳥です。

 ノビタキは川原や原っぱ、畑や田んぼなどの開けた場所を好みます。上の写真のノビタキも、粟鹿川(あわががわ)の河川敷(かせんじき)にしばらく滞在(たいざい)し、岸に転がる流木にとまっては、桜が咲く川下をじぃ〜っと見つめていした。いったいここで何をしているのでしょうか?
 実は、エサを探しているのです。ノビタキのエサの捕り方は“待ち伏せ猟(りょう)”です。地面から突き出た草などの見晴らしがよい場所で待機し、見つけた獲物(えもの)を狙って勢いよく飛び出す姿あちらでもこちらでも目にします。
 先ほどから、枝先で身体をピクピク上下に動かしながらエサを探していたメススクランブル発進でもするように飛び出していきました。降り立った先は、約20メートル離れた畑の中です。さっそく望遠鏡でのぞいてみると、お見事!大きなイモムシを捕らえていました。
 ノビタキはエサ探しのため人工物にもよくとまります。ときには川岸に立てられたこんなものにも・・看板の文字が、なんだかノビタキからのメッセージのように思えました。

 桜が散り始めると、ノビタキたちは南但馬自然学校の周辺から姿を消します。きっと桜前線とともに北へ向かって旅立っていったのでしょう。今度、彼らに会えるのは、子育てを終えて南下する秋です。次は木々を色づかせる紅葉(こうよう)前線と一緒にやって来て、元気な姿を見せてくれることでしょう。

文責 増田 克也

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