ニホンジカ  06.09.19


鹿の子模様の人気者



 本校に自然学校でやって来た子どもたちに「どんな動物に会ってみたい?」とたずねてみると、リス、シカ、クマ・・・と続き、ニホンジカは人気投票第2位です。ピンとたった耳、大きな目に長いまつ毛、とってもかわいい顔をしています。子どもたちに人気があるのもうなずけます。
 ここ南但馬自然学校にはたくさんのニホンジカが棲んでいますが、夜行性のためでしょうか、子どもたちはなかなか出会えないようです。それでは、南但馬自然学校のニホンジカをじっくり見てみましょう。

 上の写真を見てください。この写真を見ているだけでもいろいろなことがわかります。
 パラボラアンテナのような耳は、小さなもの音もキャッチし、音がする方向に左右別方向にクルクル動きます。写真のニホンジカは、撮影している私の存在に気づき、両耳を正面に向け全神経を集中して、危険がないか分析しています。内側には長い毛がありますね。これはゴミや虫が入らないように耳を保護する役目があります。
 次に目を見てください。私たち人間と大きく異なるところがあります。それは目の位置です。人間の目は顔の正面にありますが、ニホンジカの目は側面に近い位置に付いています。人間でいえばこめかみの辺りですね。草食獣のニホンジカは、外敵から身を守るさしたる武器を持たないため、敵の接近をいち早く察知して逃げなければなりません。それには広い範囲を見ることができる側面に目がある方が有利ですね。人間の視野は約200度といわれていますから、ニホンジカはほぼ後ろまで見えていることでしょう。
 大切なことを見逃すところでした。このニホンジカは角がありませんからメスですね。シカの仲間はトナカイをのぞいて角を持つのはオスだけです。
 
 では、今度は全身を見てください。まずお尻に注目してください。ここには白い毛がたくさんあります。危険が迫るとこの毛を逆立て、花が咲いたようにお尻を白くして逃げていきます。これは仲間に危険を知らせる標識の役目をしています。
 次に胴体を見てください。白い水玉のような模様がありますが、これは“鹿の子模様”といってニホンジカの特徴です。ディズニー映画“バンビ”の印象が強いためか、「鹿の子模様は子ジカだけにあり成長すると消えてしまう」と思われている方が多いですが、これは夏毛の模様で、成長したニホンジカも鹿の子模様をしています。参考に冬毛のニホンジカを見てください。鹿の子模様はありませんね。毛色も茶色の夏毛に比べて黒っぽい毛をしています。

 さて、みなさんがニホンジカに出会うにはどうしたらいいでしょう。ニホンジカは夜行性の動物ですから夜に探してみるのが一番です。刈り取りが済んだ田んぼには、稲の切り株から伸びた二番穂を目当てにニホンジカがやって来ます。でも、みなさんには夜に出歩くことは勧められません。そこでニホンジカのフィールドサイン(痕跡)を探してみてはいかがでしょう。それでは、いくつかのフィールドサインを紹介します。
 まずは、寝床を探してみましょう。冬になり雪が積もるとニホンジカは雪をかいて寝床にするので見つけるのは簡単です。暑い夏は木陰の散策道で、ひんやりした地面をベッドにしています。こんなチャンスに出会ったら静かに観察しましょう。少しでも音をたてるとすぐに気づかれてしまいます
 次は足跡です。ニホンジカは2つに割れたひづめを待っています。森のスポーツ広場へ行ってみましょう、必ず足跡を見つけられますよ。ただし、ニホンジカによく似たイノシシの足跡もあるので、間違えないようにしてください。足跡の近くには、みなさんの小指の先くらいな大きさのフンも落ちているはずです。いろいろなフィールドサインから、探偵気分でニホンジカの生活を想像してみるのも楽しいですよ。

 兵庫県は全国でもニホンジカの多い県です。中でもとりわけ南但馬地方には多く生息しています。そのため農業や林業への被害は深刻で、お金に換算すると兵庫県全体で年間約6億円にもなります。また、罠や鉄砲で捕獲されるニホンジカの数は1万頭以上とこれも大変な数です。
 この「6億円と1万頭」という数字だけをみても、私たち人間とニホンジカの関係がおかしくなっていることがわかります。いったい原因は何でしょう。また、それを解決するにはどうしたらよいでしょう。私たちひとりひとりが考えていかなければならない問題です。

文責 増田 克也

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