ムクドリ 07.12.04




カキの実争奪戦



 寒くなり食べ物が乏しくなると、庭先の植木や生け垣に実った果実を求めて野鳥たちが集まってきます。その中でも赤く熟したカキの実は大変なご馳走です。おや、電線に集まっていたムクドリたちが1羽2羽と飛び立っていきますよ。彼らの向かった先は、もちろんあま〜い実を付けたカキの木です。 
 
 ムクドリは誰もがよく知る身近な野鳥です。近年、市街地の街路樹などに集団でねぐらを取り、その糞や鳴き声が公害となることですっかり害鳥扱いにされています。本来、ムクドリは原っぱや開けた農耕地を住処とする野鳥でしたが、都市の環境にすっかり順応してしまったようです。山間部にある南但馬自然学校ではムクドリは大変珍しい存在ですが、ひとたび里に下りると普通に見ることができる野鳥です。

 さて、それではカキの実を食べるムクドリを見てみましょう。電線に仲良くとまっていたムクドリたちですが、好物のカキの実を前にすると目の色を変えて、あっちでもこっちでも激しい“カキの実争奪戦”を繰り広げ、辺りはけたたましい鳴き声が響きます。まだまだ、十分にカキの実は残っているのに、なぜそんなにいがみ合うのでしょう。ムクドリたちをしばらく観察していると、どうやらお目当ての実があるようです。それは上から2番目にある半分食べかけのカキの実です。
 ではどうして食べかけの実がいいのでしょう。同じ木に実ったカキの実ですから味には大差はないはずです。私なら、たくさん食べられるので“食べかけ”より“丸ごと”の実を選びますが? その訳は、くちばしで少しずつ突いて食べるムクドリには、どうやら柔らかい中身が露出した“食べかけ”の方が食べやすいようです。

 お目当てのカキの実が食べられる最適なポジションに陣取ったムクドリは、他の者が少しでも近づこうものなら、激しく威嚇をします。それでもひるまない相手には、ぽっぺたを引っ張り先制攻撃を加え徹底的に追い払います。いつ終わるとも知れない“カキの実争奪戦”にあきれていると、カキの木の向こうを大きなシッポを揺らせながらホンドギツネが駆け抜けていきました。その瞬間、あんなにいがみ合っていたものたちが、みんな仲良く一斉に飛び出し争奪戦はあっけなく休戦とあいなりました。

文責 増田 克也

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