ミヤマガラス 08.02.26




大陸からやって来た旅ガラス



 冬には、ハシボソガラスやハシブトガラスといった普段からよく目にするカラス以外に、中国大陸などから渡ってくる珍しいミヤマガラスが見られることがあります。但馬地方では、北部の豊岡市周辺で大きな群れが毎年のように観察されていますが、餌場となる広い農耕地がない山沿いの南但馬自然学校周辺には飛来しないものと高をくくっていました。それでも田んぼや畑で、カラスが群れているところに出くわすとつい気になり、双眼鏡を持ち出しては探すものの、お馴染みのハシボソガラスとハシブトガラスばかりです。

 ところが、先日のこと、雪がまばらに残る田んぼで餌を探す、40羽ほどのハシボソガラスの群れに、1羽だけくちばしの色と形状が違ったものを見つけ、双眼鏡で確認するとそれは紛れもなくミヤマガラスでした。
 早速、初飛来したミヤマガラスを何とか記録しようと、じわりと距離を詰めますが、用心深いカラスたちはすぐに飛び立ち近づくことを許してくれません。それならば持久戦です。翌朝からカラスたちに受け入れてもらえるまで餌場の田んぼへ通うことにしました。

 夜が明けると、山から突き出たケヤキにカラスたちが集まり始め、40〜50羽がそろったところで誰かが号令でもかけたように一斉に田んぼに下りてきます。
 さあ、群れの中でたった1羽のミヤマガラス探しです。特徴として「ハシボソガラスより少し小さい」と図鑑には書いてありますが、遠目には全くわかりません。そこで最大の識別ポイント、くちばしの付け根が白く頭が平らなものを双眼鏡で1羽1羽を探していきますが、田んぼで餌を採るカラスたちは、なかなか顔を上げてくれません。その上、あちらこちらに動き回られると、どのカラスを確認したのかわからなくなってしまいます。そんなことをしているうちに飛ばれてしまい御破算となります。
 それでも、餌場に通い続けて2週間ほど経つと、そこは賢いカラスたちのこと「いつも同じ時間にやって来る変な人間は危害を加えない」とでも理解してくれたのでしょう。少しずつ近寄らせてくれるようになり、図鑑に使えそうな写真も撮らせてくれました。

 以前には、九州などごく限られた地域だけに飛来していたミヤマガラスですが、近年、分布域を東へ拡大していると言われ、今後の動向が気になるところです。
 みなさんの周辺にはカラスが群れていませんか? 少し小柄で頭が平らなカラスはいませんか? 機会があれば大陸からの旅ガラスを探してみてください。

文責 増田 克也

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