ミスミソウ 07.04.10





里の春と山の春



 水温む春がやって来ました。このところの暖かさは、まさに春爛漫という言葉がぴったりです。先週末には、今が盛りと咲き誇るサクラに誘われ、お花見に出かけられた方も多いことでしょうが、サクラに集まるのは人間だけではありません。そこで“里の春”の代表選手サクラに訪れる野鳥たちをこっそりのぞいてみました。

 まずやって来たのは、常連さんの“ヒヨドリ”です。黄色い花粉のファンデーションでお化粧をした姿をよく目にします。冬には畑の残りものを失敬していた彼らには、サクラの蜜はこたえられない甘さでしょう。
 「クチュクチュ、チュイ〜」騒がしい声が後ろから近づいてきます。ふり返ると、黄色い羽がよく目立つスズメより小さな小鳥が数十羽の群れで通り過ぎ、サクラのてっぺんにとまりました。双眼鏡でのぞいてみると、間もなく北国へ旅立つ“マヒワ”です。写真をよく見ると丸印のものは頭が黒くなり夏羽になっていますし、一番上にとまったものは、おちょぼ口を精一杯開いてさえずっていますね。
 次の訪問者は“カシラダカ”です。この野鳥も北へ帰る渡り鳥です。冬の間は「チッ、チッ」と地味に鳴いていた彼らも、サクラの花で飾られたステージで複雑にさえずり、繁殖地でメス鳥に捧げるラブソングのリハーサルに余念がありません。
 さすがに“里の春”の代表選手サクラです。この他にも、メジロ、アトリ、スズメなどいろいろな野鳥を引きつけて止まないようです。
  
 それでは“山の春”はどうでしょうか。そこで南但馬自然学校の朝来山へ足を向けました。実は今日の登山には目的があります。それは、毎年この時季に同じ場所で出会うあの花の様子伺いです。
 急な山道を一気に登りつめると、ありましたありました。目当ての“ミスミソウ”が山肌に1pほどの花を控えめに咲かせています。こちらの花は、この春に芽を出したモミの木と仲良く肩を並べて咲いています。ミスミソウの名前の由来となった「3つの角」を持つ葉っぱがよく見てとれます。ここから少し上の斜面には、朝来山では珍しい淡いピンク色の花も見つけることができました。
 ミスミソウに満足し、足取り軽く帰路につくと、下山道では群れ咲くスミレが手を振るように青い花を左右に揺らせながら見送ってくれました。

 山には里のような豪華絢爛な花はありませんが、ひっそりと確実に春が訪れていました。みなさんも里のお花見が一段落してから、“山の春”を探してみてはいかがでしょうか。

文責 増田 克也


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