ミサゴ 08.05.20




山に巣をかけたミサゴ



 山の尾根にそびえるアカマツの大木にミサゴが巣をかけました。ミサゴは魚を捕らえて食べるタカの仲間で、「兵庫県レッドデータAランク」、「環境省レッドデータ準絶滅危惧(じゅんぜつめつきぐしゅ)」に指定されている野鳥です。但馬では円山川の下流や海岸でよく見かけますが、山の中にある南但馬自然学校周辺では大変珍しい野鳥です。今週の“自然のページ”はミサゴの巣作りの1コマを紹介(しょうかい)します。

 山に登ったある日、遠くを飛ぶ翼の細長い大きな鳥をみつけ、その特徴(とくちょう)のあるシルエットからすぐミサゴだとわかりました。双眼鏡(そうがんきょう)で後を追うと、200メートル以上も離れた向かいの尾根のアカマツにとまり、足下に集められた枝をしきりにつついています。この様子を見ると、どうやらここに巣をかけたようです。

 巣材の枝をくちばしでくわえて押さえつけたり、羽ばたきながら足で踏みつけたり。この動作を何度か繰り返すと、納得(なっとく)したのか飛び立っていきました。その後、待つこと約3時間、今度は枝をしっかり両足で掴(つか)んで巣へ戻ってきました。この日、巣材を運ぶ姿を見せたのは一度限りでした。何度も巣材を運ばないところをみると、この巣はほぼ完成しているのでしょう。

 数日後、再び巣の観察に訪れると、周辺はひっそりと静まりかえっています。望遠鏡(ぼうえんきょう)でのぞいてみると、巣に伏(ふ)せ、険しい表情で頭だけをぬうっと突き上げ、あちらこちらを潜望鏡(せんぼうきょう)のように見回し警戒(けいかい)するメスの姿がありました。どうやら卵を温めているようです。
 突然、巣の中のメスがけたたましく鳴き始めたと思うと、オスが巣に戻ってきました。足にはフナのような半身だけの大きな魚を掴んでいます。よほどお腹がすいていたのでしょう、オスが巣に降り立つとメスは待ちかねたように魚をむさぼり始めました

 ところで、海岸や広い河口付近を主な住処(すみか)とするミサゴが、なぜこんな山の中にいるのでしょうか。その訳は地図を広げるとすぐにわかります。南但馬自然学校の南には大きなダム湖が3つもあり、この湖から魚を捕り生活をしているのです。
 さあ、山に暮らす珍しいミサゴは無事に子育てを終えることができるでしょうか。今後もそっと観察を続けていこうと思います。

文責 増田 克也

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