本館前で子育て中
巣の中を望遠鏡でのぞくと、そこにはまだ目が開かない5羽のヒナが親鳥の帰りを静かに待っていました。この日はぐんぐん気温が上がり最高気温は30℃。木陰に作られた涼しげな巣でもさすがに暑かったのでしょう。ヒナたちは口をあんぐり開けて体温調節をしています。
この暑さの中でも、親鳥は3〜10分おきに餌を運んできます。そこで、どんな餌をヒナたちに与えているのか少し観察してみることにしました。まず、捕まえてきたのは小さなカマキリです。頭からヒナの口に押し込みました。次はアオムシのようですね。食欲旺盛なヒナは一口で呑み込んでしまいます。今度はサツマノミダマシというクモを運んできました。これはかなりの大物で数回に分けて与えていました。8分間のブランクをおいて数匹の虫を運んできました。親鳥のくちばしに白い粉のようなものが付いていることから、エゴノキに寄生し虫こぶの中で発生するエゴノネコアシアブラムシではないかと思います。
親鳥はヒナに餌を与えるとすぐに飛びたたず、ヒナが糞をするのを待ち、これをくわえて外に持ち出します。ヒナの糞は親鳥がくわえ易いように薄い膜に包まています。親鳥が糞を持ち出すのは、巣を清潔に保ち、外敵に巣の場所を覚られないためと考えられます。
それにしても、餌を運ぶ親鳥は随分みすぼらしい姿をしています。今までメジロは「うぐいす色の美しい小鳥」というイメージが強かっただけに、余計に貧相に見えてしまいます。きっと親鳥は羽繕いもままならないほど餌探しに奔走しているのでしょう。正に命を削っての子育てです。
本館のエントランスには望遠鏡をセットして、いつでも巣の様子を観察できるようにしています。図鑑によると、メジロの在巣期間(ふ化から巣立ちまでの期間)は10〜13日ということですから、あと1週間程度は、その愛らしい姿で私たちを楽しませてくれることでしょう。
文責 増田 克也
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