カイツブリ 08.01.15




ずんぐりむっくり潜水名人



 南但馬自然学校の近くの円山川には、“カイツブリ”という小さな水鳥が棲んでいます。カイツブリはツバメやカモのように渡りをしないので、川にふらっと立ち寄っても出会える身近な存在です。その大きさは体長26p、よく見かけるヒヨドリくらいで、この周辺で見られる水鳥の中では最小の部類に入ります。余りに小さいのでカモたちと一緒にいるときは、うっかりヒナと勘違いしそうになるほどです。

 カイツブリは水中で小魚や水生生物を捕らえて生活をしています。しかし、ズングリ体型で遠目にはフワフワの綿毛が浮いているようにしか見えないカイツブリ
が、どうしてすばしっこい小魚を捕らえることができるのか不思議でなりませんでした。
 そこで、なんとか水中のカイツブリを見てみたいと思い、比較的流れが穏やかで水面が平らな岸辺に身を潜めていると、遠くに浮かんでいたカイツブリが徐々に近づいてきました。約20メートルほど手前まで近づいたかと思うと、いきなり「ズボッ」と潜水を始めました。「しめた!」目を皿のようにして水中をのぞき込むと、あのズングリ体型のカイツブリとは似ても似つかぬ、流線型をした魚雷のような物体が、あっと言う間に視界から消えていきました。
 カイツブリは体型を変化させ、まるで矢のように水中を突き進み獲物を捕らえていたのです。これで長い間、心の中で抱いていた疑問が一瞬で吹っ飛んでいきました。

 潜水するカイツブリを見失ってから数秒後、別個体が遥か彼方の水面にひょっこり浮上してきました。よく見るとくちばしには獲物を捕らえています写真を拡大すると、この魚はドジョウを大きくしたようなコイ科の“カマツカ”でした。
 
 その後もカイツブリたちは、何度も何度も潜水を繰り返しますが、水面に浮上してきたときには、ふんわり綿毛に戻り、何事もなかったように水面をぷかぷか漂っていました

文責 増田 克也

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