ホオノキ(花) 07.05.29





大と小の白い花



 南但馬自然学校は今、ホオノキの花の香りに包まれています。キャンプ場、生活棟、散策道はもちろん、どこもかしこも甘い香りでいっぱいです。白く大きな花が放つ香りは風に運ばれ四方に広がります。この甘い香りに鼻をくすぐられると、思わずふり返り、上を見上げてしまいますが、どこから香るのかは知れず、そこにはただ甘い香りが漂うばかりです。

 4月に入るとホオノキは芽吹きを迎えます。万年筆ほどの細い芽がふくらみ始め、次にバナナの皮がむけるように展開していきます。そして約20日後、改めて見てみるといつの間にか、にぎりこぶしほどもある大きなつぼみをいくつもふくらませていました。この状態から開花まではアッと言う間の約2時間です。
 ホオノキは花だけでなく、葉っぱもいい香りがします。 飛騨地方では昔から料理にホオノキの葉っぱがよく用いられ、味噌に薬味や山菜などを混ぜ込み、葉っぱに包んで焼いた “朴葉味噌”は飛騨地方の郷土料理として有名です。

 直径15pもあろうかと思われるホオノキの花に目を奪われていると、すぐ足元の慎ましい花を見落としてしまうところでした。散策道「むささびコース」で、15pほどの身の丈の先端に、白い花を2つ付けた野生の蘭“ギンラン”が木漏れ日のスポットライトを浴びて輝いています。南但馬自然学校では、ギンランと同じ仲間で黄色い花を咲かせる“キンラン”は数年前から毎年見られるようになりましたが、白い花のギンランは、まだまだ珍しい存在です。
 ギンランが咲いたその先には、みずみずしい4枚の葉っぱの中心に、控えめな花を付けた“ヒトリシズカ”がたたずんでいました。この名前は、平安の昔、静御前が舞を舞った姿に似ていることから付けられました。薄暗くスギ葉が敷きつめられたこの場所は、ヒトリシズカの舞の舞台にふさわしい神秘的な空気に包まれていました。

文責 増田 克也

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