ヒガンバナ  06.10.03


田んぼに咲く花たち



 10月に入り少しずつ秋が深まり、山の木々も色づき始めています。周辺の田んぼでは、ほぼ稲刈りが終わり、9月28日には南但馬自然学校でも、相生市立若狭野小学校のみなさんが、地元、迫間区の方々に稲の刈り方や束ね方を教えていただきながら稲刈りに挑戦しました。
 刈り取りが終わった田んぼに行ってみると、稲刈りの最中には気づかなかった草花がかわいらしい花を咲かせていました。今回の「自然のページ」は田んぼの周りの植物に目を向けてみました。

 この時期の主役はなんと言っても“ヒガンバナ”です。畦や堤防の土手には、ヒガンバナがまっ赤な花を咲かせています。ヒガンバナは中国から日本に入ってきた帰化植物ですが、今ではすっかり日本の秋を彩る花になりました。そのため呼び名は地方により様々です。今思いつくだけでも、マンジュシャゲ、ハカバナ、キツネノカンザシ、ユウレイバナなどがありますが、全国では1000を越える呼び名があるそうです。
 赤くきれいなヒガンバナですが、根っこには毒があります。私が子どもの頃に、ヒガンバナをつんで遊んでいると「家が火事になる!」と叱られたことを思い出しました。今考えると、それは毒への戒めのように思います。

 田んぼの畦を見回すと、まっ先に目に飛び込んできたのが、ピンク色のピンポン玉のような花をつけた“アカツメクサ”です。秋風に大きな花が右に左に揺れていました。こちらには小さな“ゲンノショウコ”が咲いています。花の色は赤と白があり、今でも薬草として用いられます。スズランのような紫色の花は“ツリガネニンジン”です。その名前は、花の形が釣り鐘形で根っこがニンジンのように太くなることから名づけられました。次に見つけたのは、反り返った茎にたくさんの花を付けている“アキノタムラソウ”です。花に近寄ってみると、雄しべが垂れ下がったおもしろい形をしています。花びらの裏にクモがかくれんぼをしているのがわかりますか。

 南但馬自然学校から少し離れた山田に行ってみました。田んぼに水を引き込む小川の周りにもいろいろな植物がありました。
 人の腰ほどもある背丈の“オタカラコウ”がよく目立ちます。黄色い花を付けた姿には王様の風格があります。最近では少なくなっているようで、希少種に指定されているところもあります。オタカラコウの周りには“ミゾソバ”が群生しています。湿気がある場所でよく見かける植物ですが、改めて見てみるとピンク色のグラデーションが素敵な花です。上からのぞき込むと“ルリマルノミハムシ”が一心に食事をしています。私が数センチまで近づき撮影しても微動だにしません。こちらの花には“ホソヒラタアブ”が寄ってきました。ミゾソバの花にはたくさんの蜜があるのか、虫たちがかわるがわる訪れていました。

 この季節、田んぼの周りは花盛りです。いつも見かけるなんの変哲もない花も、じっくり観察すると実に美しいものです。みなさんも近くに田んぼがあれば、是非、のぞいてみてください。きっと新しい発見があるはずですよ。

文責 増田 克也


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