ベニバナヤマシャクヤク 07.06.12





紅色のヤマシャクヤク



 とある所を歩いていると、遠くに丸いピンク色のものがいくつか点々と見えました。何らかの花であることはすぐに見当が付いたので、そちらに向きを変えて少し寄り道をすることにしました。そのピンク色に一歩一歩近づくたびに「まさか、まさか」と無意識のうちにつぶやいていましたが、その場にたどり着くと言葉もなく立ちつくしてしまいました。そこにはピンポン玉ほどのピンク色の花をつけたベニバナヤマシャクヤクが群生していたのです。
 白い花を咲かせる一般的なヤマシャクヤクは何度も目にしたことがありますが、このベニバナヤマシャクヤクは初めてです。それもそのはず、兵庫県レッドデータAランク、環境省レッドデータ絶滅危惧TB類に指定されている貴重な植物です。

 ベニバナヤマシャクヤクは単に「ヤマシャクヤクに色が着いたもの」と思われがちですがヤマシャクヤクとは別種で、赤花のものと、名前にはそぐわない白花のものがあります。ここには白花もありヤマシャクヤクと間違えそうになりますが、ヤマシャクヤクの花は約一月前に終わっていますので花期で区別できます。

 この花が開き、おしべやめしべをのぞかせたところを是非、記録したいと何度もこの場所に通いましたが、思ったよりつぼみの成長は遅く、一週間経ってもまだ開いてくれません。頃合いを見計らって「今日こそは」と訪れると、昨夜の強い雷雨に打たれ無惨な姿になっていました。しかし、ここにはまだ固く閉ざしたつぼみがあり、これが大きく花開くことを期待しています。

 紅色の花に一喜一憂する変な人間の様子を木の陰からニホンジカがこっそりのぞいています。帰り道には、咲いたばかりのオオバアサガラの白いレースのような花に早速、虫たちが訪れていました。ベニバナヤマシャクヤクが花開くその日まで、幾度かこの道を通うことになるでしょう。

文責 増田 克也

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