ダンコウバイ 07.03.27





朝来山は今



 春の天候はめまぐるしく変わります。汗ばむほど暖かくなったかと思うとまた雪が降り、部屋のすみっこに追いやったストーブに火を入れたりと、三寒四温という言葉がぴったりあてはまるこの頃です。テレビの天気予報が「明日は最近で一番のいいお天気です」と報じた翌朝、春には珍しい濃い霧に包まれました。そこで朝来山の様子を伺いに行くことにしました。
 
 朝日のシャワーが降り注ぐくまコースを登っていくと、まず目に飛び込んできたのは、小指の先ほどの小さな花をいっぱい付けた“ダンコウバイ”です。近づいてみると、黄色いポンポンの様な小さな花は、更に小さな花が寄せ集まってできていることがわかります。木漏れ日のスポットライトに浮かびあがった花には、両脚にオレンジ色の花粉だんごを蓄えた“ニホンミツバチ”が訪れていました。

 ダンコウバイを見送り、少し上がると次も黄色が目に付きました。遠目には、五月雨(さみだれ)のようにも、暖簾(のれん)のようにも見えるのは“キブシ”の花です。枝先を見ると小さな花が上から順番に開き、下の方はまだつぼみです。このキブシはまだ5分咲きくらいでしょうか。今度は満開の頃を見計らって訪れたいものです。さぞ美しいことでしょう。

 こちらは今がちょうど見頃、釣り鐘のような白い花を満開にした“アセビ”が春風に揺れています。アセビは漢字で「馬酔木」と書き、スズランのような可愛らしい花とは裏腹に有毒植物です。朝来山に棲むニホンジカたちもそのことをよく知っていて、アセビだけは口にしません。

 黄や白の花たちを見ながら登っていると、いつの間にか雲海展望台が見えてきました。山の上は晴れわたっていますが、展望台から見下ろす南但馬自然学校は霧の中。もわっとした春がすみの様な雲海に覆われ全く見えません。
 さあ、ここからが朝来山登山の難所です。雲海展望台から約30分、急な階段を登りきり、雪の残る尾根を西に向かいやっとのことで朝来山山頂に到着しました。
 
 山頂で心地よい汗をぬぐっていると、冬眠から目覚めた“アカタテハ”がひらひらと不規則な軌道を描きながら、少し離れた木の幹にとまりました。抜き足差し足で近づきましたが、さっと飛ばれてしまい、今度は日当たりのよい地面に舞い降りました。きっと冬眠明けのひなたぼっこをしているのでしょう。
 地面で閉じると落ち葉に紛れ、遠目には全くわからないほど見事なカモフラージュとなります。(どこにいるかわかりますか・・・? 答えはこちら)身体が十分に暖まったのでしょうか、しばらくすると地面から飛び立っていきました。
 アカタテハが小さくなるまで見送ったその先には、まだつぼみを固く閉ざしたアセビが開花のときを静かに待っていました。

文責 増田 克也

 
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