声は哀愁を帯びて


全身を赤でコーディネイトした、夏の渡り鳥アカショウビン。体の色こそ違うがカワセミの仲間。
 
6月に入り、深い広葉樹の山に向かうと「キョロロロロ~」と尻下(しりさ)がりに消えていく、どこかもの悲しい声が聞こえて来るようになりました。
この声はアカショウビンという、南の国からやって来る渡(わた)り鳥のもので、高く澄(す)んだ声は思いの外、遠くまで届きます。

上の写真をご覧ください。名前にアカが付くのは伊達(だて)ではありません。ほぼ全身が赤褐色(せきかっしょく)に近い赤みを帯びた色で、中でも大きなくちばしと、小さな脚(あし)は特に赤く「火の鳥」と異名を取るのもうなずけます。


近くにパートナーがいるのだろうか、翼を広げてアピールしているようだ
 
ところが、全身に赤色を纏(まと)った火の鳥も、腰(こし)の辺りに水色のラインがチラッと覗(のそ)いています。これは「ブルーのパンツ」と表現する人もある、ワンポイントアクセントのご愛敬

これだけ派手な色合いでも、姿を探すのはなかなか大変です。本来、薄暗(うすぐら)い広葉樹林を好むため見つけにくいのは当然ですが、森に日が差しても、葉っぱを透過(とうか)する光にうまく溶(と)け込(こ)んでしまうのがアカショウビンの体色です。


体に不釣り合いなほど大きなくちばしで、カエル、トカゲ、魚など多様な生き物を捕らえる。
 
声は響(ひび)いてくるが、どこにいるのかわからない、「声はすれども姿は見えず」のシチュエーションに、これまで何度もヤキモキさせられましたが、たとえ声だけでも、「まぁいいか、今年も来てくれたんだな」とほのぼのとした気持ちにさせられるのは、あの哀愁(あいしゅう)を帯びた声のなせる業なのでしょう。

雨の日によく鳴くところから「雨乞(あまご)い鳥」とも呼ばれるアカショウビン。このところ、本校の周辺でも、毎日のように声が耳に届きます。それでは、しとしと続く梅雨の雨によく似合う声を、下のプレイヤーからお聞きください。
 
 文責 増田 克也
 


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