冬の顔と春の顔


シラサギという呼び名は白いサギの総称で、大きさによってそれぞれ個別の名前が付いている
 
そっと近づいたつもりでしたが、あっという間に逃(に)げられてしまいました。真っ白な羽を広げて飛び出したのは、通称(つうしょう)シラサギです。

実のところ、シラサギという呼び方は、白いサギをひとまとめにしたもので、種名としてそのような鳥は存在しません。正式には、体の小さなものから順番に、コサギ、チュウサギ、ダイサギという名前があり、写真のシラサギは一番大きなダイサギです。


繁殖期には胸や背中に飾り羽をもうける
 
只今(ただいま)、繁殖期(はんしょくき)まっただ中のダイサギには、普段(ふだん)にはない変化が現れています。上の写真をご覧ください、背中に美しいレースのショールをまとっていますね。



 左が冬、右は春 くちばしと目先に色の違いが

また、顔にも注目してください。上の写真にあるように、冬に黄色いくちばしが、繁殖期を迎(むか)える春には黒くなるのです。また、目先の皮膚(ひふ)も鮮(あざ)やかなコバルトブルーに変化していますね。このような繁殖期に現れる体の色を、婚姻色(こんいんしょく)といい、魚類や両生類などにもみられます。


ケーンケン! ほろ打ちをして縄張りを宣言するオスのキジ
 
次に登場するのは、日本の国鳥キジです。昔話、桃太郎(ももたろう)でもお馴染(なじ)みですね。この時季、田んぼや河川敷(かせんしき)では、「ケーンケン」と大声を張り上げ、羽ばたきを繰(く)り返す“ほろ打ち”を行い、縄張(なわば)り主張をするオスの姿をよく目にします。

このキジも、冬と春では顔に大きな違(ちが)いがあります。それでは、何はともあれ下の写真をご覧ください。
 

 昔話、桃太郎に登場するキジはどちらのタイプだろうか?

いかがでしょうか。

繁殖期の春には、顔の赤い部分が大きく発達し、まるで兜(かぶと)を被(かぶ)った戦国武将のようでとても強そうです。また、目の黄色も濃(こ)くなり、全体に引き締(し)まって凛々(りり)しく見えますね。

普段、何気なく見ている身近な野鳥でも、季節によって顔の色や形が大きく変化します。今度、彼(かれ)らに出会う機会があれば、美しく着飾(きかざ)った姿や、勇ましい出で立ちをじっくり観察してやってください。
 文責 増田 克也
 


“自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp