口をつぐんでポポ


両翼を垂らした独特のスタイルで枝にとまるツツドリ
 
「ポポ、ポポ」空から降ってくる声を見上げれば、首の後ろが痛くなるほど高い木のてっぺんに
、ツツドリがとまっていました。

特別、野鳥に関心のない方には、ツツドリなんて聞き慣れない名前でしょうが、童謡(どうよう)などでお馴染(なじ)みのカッコウの仲間で、春に繁殖(はんしょく)のために東南アジアなどからやって来る渡(わた)り鳥です。

ツツドリの鳴き声は特徴的(とくちょうてき)ですよ。「ポポ、ポポ」と2連、または4連で続ける鼓(つづみ)のような声は、よほど鳥のさえずりらしくはないですが、とてもユニークで一度聞くと忘れられません。

そもそも、このツツドリという名前も、鳴き声から来ているのです。筒状(つつじょう)になったパイプなどの口を、手の平で覆(おお)うように叩(たた)けば鳴る「ポンポン」という音が、ツツドリの声によく似ていることから名付けられました。ちなみにツツドリを漢字で書くと「筒鳥」となります。

それでは、上の写真をご覧ください。これはツツドリが鳴いている様子ですが、何か変なことに気付かれませんか?

口元に注目してください。そうなんです、ツツドリはさえずる際に口を開けていません。別の写真を確認しても、喉(のど)が多少ふくらんでいますが、やはり口を閉じています。




 次のさえずりポイント、高いスギの梢に向かって移動するツツドリ

本来、野鳥たちは、メスへのアピールやテリトリーを宣言するために、遠くまで届けとばかりに、できるだけ大きな口を開けてさえずるものですが、ツツドリは一体どうしたことでしょう。

その理由を頭をひねって考えてみました。オペラ歌手が大ホールでマイクを使わず、全身を共鳴させて声を増幅(ぞうふく)させるように、他の野鳥に比べて低く太いツツドリの声は、口を閉じて体で共鳴させる方が、遠くまで伝わるのではないのでしょうか。

私の何の根拠(こんきょ)もない推測はさておき、ともかくツツドリの声を聞いていただきましょう。
 

いかがでしたでしょうか、この時季、山から「ポポ、ポポ」と盛んに聞こえてきます。みなさんも是非(ぜひ)、ユーモラスなツツドリの鼓に耳を傾(かたむ)けてください。

 文責 増田 克也
 


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