赤暗い月


 みなさんは10月8日の夕刻から始まった、皆既月食(かいきげっしょく)をご覧になりましたか。この度の月食は、夜更(よふ)かしや早起きをしなくても、宵(よい)の時刻に見られ、しかも月が地球の影(かげ)にすっぽりと入り込(こ)む、皆既の状態がおよそ1時間も続く好条件で観察できるという前触(まえふ)れでしたので、普段(ふだん)は天体にさほど関心がなくても、この時ばかりは夜空を見上げられた方がたくさんいらしたのではないでしょうか。実は、私もその一人です。

 今回は観察対象が月ですので、特別な道具は必要ありませんが、とりあえず写真を撮(と)ろうとカメラを持ち出し、月食が始まる1時間前に東の空に向けてスタンバイしました。
 ところがです、昼間はあれほどいい天気だったものが、月食開始時刻が近づいた18時には全天を厚い雲が覆(おお)ってしまいました。いよいよ、開始時刻の18時15分を迎(むか)えましたが、一向に晴れる気配はありません。

 「今回はダメか・・・」観察をあきらめて、他の作業をしていた18時30分のこと、何気なく東の空を見上げれば、山の縁(へり)から、ぬうっと大きな満月が顔を出しているではありませんか。あわててシャッターを切ったため、露出(ろしゅつ)の設定を誤り、のっぺらぼうのブレた月になってしまいました。

 いつの間にか雲が切れ晴れていたのです。 時刻は18時37分、今度は落ち着いて月が山を抜(ぬ)け出したところでパチリ!既(すで)に月食が始まり、地球の影に入った月は1/3ほど暗く沈(しず)んでいます。その後、影は見る見る広がり、19時14分には上部の一部を残し、ほとんどが黒くなりました

 19時24分、月は地球の影に完全に入り込み、遂(つい)に赤暗い月が現れました。事前に話を伺(うかが)った天体ファンの方によると、この赤銅色(しゃくどうしょく)の月が最大の見どころだということですが、何だか魔物(まもの)でも出てきそうな気味の悪い月でした。

 月が光を失うと、空が暗くなり他の星の輝(かがや)きが増します。こちらの写真をご覧ください。写真左下にあるのが、皆既中の月で、その上部には、いつもの満月の夜には見ることができない、たくさんの星が広がっています。また、普段は探すのが難しい天王星を見つけることができたのも収穫でした。この写真の右上にある小さな点が天王星です

 20時40分を過ぎた頃、月は地球の影から抜け出し始めました。その後、ぐんぐん光を取り戻(もど)し、20時51分には1/3が明るくなり、そして21時34分、強烈(きょうれつ)な光を放ついつもの満月となって、3時間以上に及(およ)ぶ天体ショーは幕を閉じました。

 それでは最後に、光が満ちてくる様子を時間を縮めてコマ送りで撮影したものを下のフレームからご覧ください。

文責 増田 克也





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