大物ゲット !?


 菜の花の季節が過ぎ去り、夏を思わせる日差しが眩(まぶ)しいこの頃(ごろ)です。野鳥の世界も一変し、冬を本校の周辺で過ごした、ツグミジョウビタキなどの冬鳥は北へ去り、代わりに、オオルリキビタキといった、南の国から繁殖(はんしょく)のためにやって来る、夏鳥の姿を目にするようになりました。

 そんなある日の早朝、本校から3qほど西に下った円山川に出向き、川面(かわも)を見渡(みわた)すと「えっ!」思わず声が出るほどビックリしました。とっくにいなくなったと思っていたカワアイサが1羽、未だに残っているではありませんか。

 カワアイサは、越冬(えっとう)のために日本へやって来るカモの仲間で、そのスマートな体を生かして魚を捕(と)らえる、潜水(せんすい)のスペシャリストです。
 この辺りで冬を過ごした他のカモたちは、春の早い時季に、北の地へ旅立ちましたが、このカワアイサはいったいどうしたのでしょう。ケガでも負って傷を癒(いや)すため、いままで滞在(たいざい)していたのでしょうか、それとも、単なるのんびり屋なのでしょうか・・・あれやこれやと考えてしまいます。
 
 カワアイサを見ていると、先ほどから、少し苦しそうにうつむき加減で泳いでいます。その訳はすぐに分かりました。口元を拡大したこの写真を見てください。大きなナマズを捕らえていますね。

 大物を捕らえたまではよいものの、さあ、これらからが大変です、これを食べないと意味がありません。何せ、カワアイサの食事法は“丸呑(まるの)み”ですから、「こんなに大きいナマズ・・・本当に大丈夫(だいじょうぶ)?」と心配してしまいます。

 浅瀬(あさせ)に向かい、足を踏(ふ)ん張ったカワアイサですが、獲物(えもの)はかなり大きく、くちばしから随分(ずいぶん)はみ出しています。これでは、到底(とうてい)呑み込(こ)むことはできません。それに、ナマズ特有の滑(ぬめ)りも相まって、危うく流されそうになるシーンも度々あり、悪戦苦闘(あくせんくとう)しています。

 更(さら)に、カワアイサの奮闘(ふんとう)は続きます。次なる作戦は、重たそうなナマズを振(ふ)り上げて、一気に喉(のど)へ落とし込む戦法です。しかし、軟(やわ)らかいナマズは右へ左へぐにゃりと曲がり、何度やってもうまくいきません。ついには、この大物をあきらめて、川に流してしまいました。
 
 カワアイサはさぞかし残念だったことでしょう。その後、悔(くや)しさを振り切るように、大きく伸(の)び上がって羽ばたくと、流れに身を任せ川下へ姿を消していきました。
 

文責 増田 克也

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