三面張りに順応


 生き物を探してフィールドに出向いても、全く撮影(さつえい)できない日が続くと、気が滅入(めい)ってしまいます。そんな時、「しゃあない、気分転換(きぶんてんかん)にあれでも撮(と)るか」と、向かった所は、円山川に注ぐ土田川の最下流です。
 土田川は名前にこそ「川」の文字が付きますが、川幅(かわはば)は約3メートル、岸と川底をコンクリートで固めた、所謂(いわゆる)、三面張りの水路です。

 土田川にいつ出向いても、必ずと言ってよいほど見られるのがクサシギです。しかも、10メートルほどまでに近づいても、一向に動じることはなく逃(に)げないのです。これなら苦労せずに写真が撮れるという訳です。しかし、撮るには撮っても達成感が得られず、普段(ふだん)はカメラを向けることはありません。

 クサシギは水中へ頭を出し入れして、懸命(けんめい)に食べ物を探しています。くちばしで川底をつつき、川虫など動物性のものを食べるのですが、この日はどういう訳か、藻(も)や水草のようなものを採っています。何度か撮影をして、画像を確認しても、やっぱり草をくわえています。
 クサシギは時として、植物性の藻や水草を食べるのでしょうか、それとも、採った草の中に虫などが潜(ひそ)んでいるのでしょうか。疑問が残る行動でした。

 確認のため、カメラの液晶(えきしょう)モニターで、何度もくちばしを拡大して見ていると、鼻の穴が貯金箱の投入口のように細長く、くちばしの先端(せんたん)は、へら状で平らになっていることに気づきました。そして、首を伸(の)ばせば意外に長いのです。水中へこの首を伸ばして、ズボッとやる訳ですね。

 ところで、クサシギはなぜいつもここにいるのでしょうか。おそらく水位が低く、川底が真っ平らな土田川は、クサシギにとってエサ採りに都合の良い場所なのでしょう。
 自然破壊(しぜんはかい)の象徴(しょうちょう)とされる三面張りを逆手にとり、見事に順応したクサシギは逞(たくま)しく感じられます。

 さて、話は変わりますが、前々回の“自然のページ”でコチドリを取り上げました。その後、ご覧いただいた方から「あれは、コチドリでなくてイカルチドリじゃないの?」とご指摘(してき)がありました。わざわざご連絡をいただきありがとうございました。

 今回の野鳥も、クサシギということで話を進めてきましたが、世の中には、クサシギによく似たイソシギが存在します。どうですかクサシギとそっくりでしょ。
 この2種の識別ポイントは、肩(かた)の切れ込(こ)みです。私は、白い部分が大きく切れ込んでいるのがイソシギ、そして切れ込みが少ないのがクサシギと考えていますが、いかがでしょうか。ご不審(ふしん)な点は、どしどしとご指摘をいただければ幸いです。

文責 増田 克也

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