鳥は飛ぶもの


 この冬、おなじみになった、越冬(えっとう)のため当地にやって来たタカの仲間、ノスリが電柱のてっぺんから地面の獲物(えもの)を探しています。「さあ、いつ飛ぶか!」カメラを構えて、飛び出す瞬間(しゅんかん)を狙(ねら)います。

 地上を駆(か)けることに特化したダチョウや、翼(つばさ)を泳ぐための道具に進化させたペンギンの仲間などを除いて、鳥は空を飛びます。その姿は躍動的(やくどうてき)で美しく、見る者を魅了(みりょう)してやみません。
 ただし、それ写真に撮(と)るとなれば、至難の業(わざ)です。飛翔(ひしょう)写真を、いとも簡単に撮影(さつえい)する達人も存在しますが、本来不器用な私にとってはきわめて困難なことです。それなら、とまっている野鳥が飛び立つシーンなら撮影できるかもしれないと思い立ち、電柱のノスリに狙いを定めたのでした。

 多くの鳥は飛び立つ際に、一瞬(いっしゅん)、体を低く構える姿勢をとります。それをサインにしてすかさずシャッターを押(お)すのですが、ノスリは待っている時に限って、なかなか飛び立たないもので、5分、10分と時間が経つにつれて、カメラを支える腕(うで)が辛(つら)くなってきます。

 わずかに左を向いたその時です、何の予告もなしに電柱を蹴(け)って飛び出しました。体を大きく傾(かたむ)けていますが、頭はオートレーサーのように水平を保ち、目はしっかりと獲物を見据(みす)えています。ファインダーにノスリを捕(と)らえようと、カメラを左に振(ふ)りながらシャッターを押しましたが、捕捉(ほそく)できたのは、次のコマまでで、他は大きく外してしまいました。

 翼をすぼめて田んぼに向かう後ろ姿、そして畦(あぜ)の手前で翼と尾羽(おばね)を大きく開いて急ブレーキ! さあ、何を捕らえたのでしょう。ノスリは数秒間、地面を見つめていましたが、すぐに方向を変え飛んで行ってしまいました。残念ですが獲物を取り逃がしたようです。

 今回はカラスほどの、比較的(ひかくてき)大きなノスリでしたので、何コマか写真を撮ることができました。しかし、これがすばしっこい小鳥になると動きが読みづらく、おいそれとはいきません。

 雪の田んぼにいるのは、冬を日本で過ごすセキレイの仲間、タヒバリです。辺りが雪で覆(おお)われた朝に水路でエサを採っていたタヒバリですが、私の接近に驚(おどろ)いて田んぼに上がって来ました。「左を見ているので、そちらへ飛ぶだろう」と予想をしてカメラを構え・・・「今だ!」 シャッターを押しましたが、見込(みこ)みは完全にハズレです。タヒバリは右に飛び出し、翼の一部しか写っていませんでした。

 次は“清流の宝石”と呼ばれるカワセミです。長いくちばしに、鮮(あざ)やかな青とオレンジの体が特徴(とくちょう)です。小さく赤い脚(あし)で、岸のとまり木につかまり、川の中をじっと見つめています。
 「今か今か・・・」タイミングを計りシャッターを押した結果は、カワセミの欠片もありません。敏捷(びんしょう)なカワセミのスピードに全く対応できませんでした。

 今度は、カワセミよりずっと大きなハヤブサの仲間、チョウゲンボウに出会いました。つぶらな瞳(ひとみ)が愛らしい野鳥ですが、これでも昆虫(こんちゅう)や小動物を狩(か)る猛禽類(もうきんるい)です。チョウゲンボウは、川岸に沿って植えられたシダレザクラの枝で周りを見渡(みわた)しています。
 「さあ、どうだ!」体を低く構える姿勢をとったと同時にシャッター押下(おうか)! ジャンプをして飛び出すタイミングを捉(とら)えましたが、チョウゲンボウの動きに合わせてカメラを振ることができずに、フレームアウトしてしまいました。

 万年初心者の私でありますが、この自然のページで情報をお伝えしていく以上、観察眼と併(あわ)せて、撮影技術の向上も図らなければならない、と今更(いまさら)ながらに感じるこの頃(ごろ)です。

文責 増田 克也

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