にぎわう雑木林


 校内の雑木林で、上の写真にある、直径5〜6oの赤く丸いものを見つけました。これを雑木林のどこで見つけたかというと、クヌギの葉っぱの上に行儀(ぎょうぎ)よく並んでいました。他の葉も確認すると、あちらこちらに付いていて、面白いことに、葉っぱの葉脈に沿ってひとつずつ配置されています。

 これはいったい何でしょう。木の実? 虫のタマゴ? もしかして、あめちゃん? いろいろと想像してしまいますが、実のところこの丸いものは、虫こぶで、名前を“クヌギハマルタマフシ”と言います。虫こぶとは、アブラムシやハチの仲間が、植物に産卵すると、その箇所(かしょ)が反応を起こして膨(ふく)らみ、こぶ状になったものです。

 それにしても、虫こぶにまで名前を付ける日本人の感覚って、素敵だと思いませんか。でも、クヌギハマルタマフシなんて、長くややこしい名前をよく付けたものです。ところが、これを区切って読んでみてください。そうすると意味がわかります。「クヌギハ=クヌギの葉っぱにある、マルタマ=丸い玉の、フシ=虫こぶ」つまり、見た目そのままなのです。

 木の葉にある赤い虫こぶばかりに気を取られていると、足下に咲(さ)く白い小さな花を、危うく踏(ふ)みつけてしまうところでした。この花は苦いお腹の薬になるセンブリです。
 ほんの少し葉っぱをもらって、口に放り込(こ)み奥歯(おくば)で軽く2度3度すりつぶすと、とたんに苦みが広がり、長い間消えずに残ります。さすがにセンブリ、「千回振(ふ)り出してもなお苦い」ことから付けられた名前は伊達(だて)ではありません。

 しばらく見ていると、こんなに苦いセンブリを何度も訪れるものがありました。それはハナアブの仲間でホソヒラタアブです。周りをホバリングしてから花に止まり、早速、花びらの根元にある蜜線(みつせん)を探り始めました。

 センブリと同じリンドウ科のリンドウもありました。つぼみは赤紫色(あかむらさきいろ)をした、ソフトクリームのように固く閉ざしています。時間が経過して先端(せんたん)が少しほころびると、早速やって来ました。花びらをすたすたと登って来るのは、体長5oほどの花粉を食べる昆虫(こんちゅう)、ルリマルノミハムシです。見ている間に、花びらの山頂を越(こ)え、リンドウの青色を背中に映すと何のためらいもなく、中へ入って行きました。開き始めた花には、新鮮(しんせん)な花粉がたくさん詰(つ)まっていることでしょう。

 次にやって来たのは、大きなマルハナバチです。いきなりつぼみに止まり、まさかまさか・・・と思っているうちに半ば強引にもぐり込み、スッポリはまってしまいました。ジャストフィット!

 本校の雑木林は、虫こぶや花、昆虫などで大にぎわいです。

文責 増田 克也


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