そぞろに秋めいて


 ついこの前まで、口を開けば「暑い暑い」と漏(も)らしていましたが、このところ朝夕はめっきり涼(すず)しくなり、過ごしやすくなりました。本校周辺の様子を見ても、田んぼの畦(あぜ)を彩(いろど)るヒガンバナは、猛暑(もうしょ)の影響(えいきょう)で開花が遅(おく)れ、未だ3分咲(ざ)きですが、農道の端(はた)には色とりどりのコスモスの花が揺(ゆ)れ、秋の風情が漂(ただよ)っています。

 そんな中、この辺りの特産物で、兵庫県認証食品「ひょうご安心ブランド農産物」にも認証されている、黒大豆の畑に立ち寄りました。そこには3名の方が、刈払機(かりはらいき)で除草作業をされていました。しばらく作業の様子を見ていましたが、刈払機を使用しても、広い畑を丁寧(ていねい)に除草するのは、時間がかかり根気のいる作業です。
 作業が一段落したところで少しお邪魔(じゃま)をして、「除草剤(じょそうざい)は使わないのですか?」と尋(たず)ねると、「マメ作るんにも、色々と決まりがあってな・・・だいたい、除草剤はマメのためにわりぃ(悪い)がな」とのことでした。さすがに、農薬や化学肥料の使用制限を設けて、人と自然にやさしい栽培方法(さいばいほうほう)で育てられる「ひょうご安心ブランド農産物」です。
 今年も、11月上旬(じょうじゅん)から始まる、「黒い宝石、大豆の王様」と称(しょう)される、大粒(おおつぶ)の黒大豆の収穫(しゅうかく)が期待されるところです。

 黒大豆の畑に立ち寄ったのは、他に目的がありました。それは畑にやってくる、ノビタキという野鳥を探すためです。ノビタキは春から夏にかけて、北海道や本州の中部以北で繁殖(はんしょく)し、冬を東南アジアなどで過ごす渡(わた)り鳥で、 北上する春と、南下する秋に、本校周辺を通過していきます。

 畑を丹念(たんねん)に探すこと2時間、やっと見つけました。畑の端(はし)に立てられた、提灯(ちょうちん)のようなフェロモントラップの上に、ちょこんととまっているのが、4月の初めに北上を見送って以来、約半年ぶりに出会うノビタキです。

 ノビタキは黒大豆の草丈(くさたけ)より一段高くなった、フェロモントラップから獲物(えもの)の虫を探しているようです。次の瞬間(しゅんかん)、目にも止まらぬ早さで飛び出して行きました。再び、フェロモントラップに戻(もど)ったノビタキのくちばしには、バッタのような虫を捕(と)らえています。それを大口で一呑(ひとの)みにすると、何事もなかったように、改めて遠くに視線を向けていました

 毎年、秋の移動の時期には、9月下旬(げじゅん)から見かけますが、今年の初確認は9月22日でした。10月中旬(ちゅうじゅん)辺りまで続く、ノビタキの南下が終わると、当地の秋はいっそう深まりを見せます。次回、ノビタキに出会えるのは、来春、桜が花開く頃(ころ)です。それまでの間、越冬地(えっとうち)で十分鋭気(えいき)を養ってほしいものです。

文責 増田 克也



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