エサちょうだい!


 田んぼの周りに巡(めぐ)らされた、防獣(ぼうじゅう)ネットに並んでとまる、3羽のツバメがいました。このツバメたちは、喉(のど)の赤色が浅く尾羽も短いところをみると、“巣立ちビナ”と言われる、まだ巣立ちをして間もない子ツバメの兄弟です。
 先ほどから親鳥が付近を飛び交う度に色めき立ち、どうにかエサをもらおうと、まるで生まれたてのヒナのように、あんぐりと大きな口を開け、親鳥の行方を追っては上下左右に首を振(ふ)る仕草がユーモラスです。

 親鳥を待ちに待った3羽の子ツバメでしたが、結局、エサを与(あた)えられたのは、少し離(はな)れたところに1羽でいた子ツバメでした。3羽は、よほど空腹だったのでしょうか、親鳥の後を追って飛び出して行きました

 いったい、子ツバメの兄弟は何羽いるのでしょう。こちらは、先ほどの様子を伺(うかが)っていた、また別の子ツバメです。すると、側に親鳥がやって来ました。ところがどういう訳か、親鳥のくちばしにはエサがありません。しかし、そんなことはお構いなし、子ツバメは、早速、羽を小刻みに震(ふる)わせ、黄色い口を開けると「エサちょうだい、エサちょうだい!」と猛(もう)アピールの開始です。
 そこに、親ツバメの後を追いかけてきたもう1羽の子ツバメが加わり、てんやわんやの大騒(おおさわ)ぎ!田んぼの周辺は親鳥が運ぶエサを巡って沸(わ)き返っていました。

 ツバメのヒナは巣立ち後、暫(しばら)くは親鳥からエサを与えられますが、間もなく独立し自分で虫などを捕(と)るようになり、親鳥はその後、シーズン2度目の繁殖(はんしょく)に入ります。

 近年、ツバメが減ったという話をよく耳にします。繁殖地(はんしょくち)である日本の環境が変化したのか、あるいは、越冬地(えっとうち)である東南アジアの大規模な森林破壊(しんりんはかい)が原因なのか、はっきりとはしませんが、その他にも様々な要因があるのでしょう。
 今、みなさんの周りにいるツバメはどうしていますか? 私たちの一番身近な野鳥、ツバメに目を向けてみてはいかがでしょうか。

文責 増田 克也



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