木洩れ陽を浴びて

 薄暗(うすぐら)い山の斜面(しゃめん)に、小さな花を咲かせたミヤマカタバミが目にとまりました。顔を近づけて直径3センチほどの花をのぞき込むと、丸い5枚の花びらは愛らしく、中央から外へ広がる透(す)き通った筋が、深山に咲く清楚(せいそ)な花の雰囲気(ふんいき)を醸(かも)し出しています。

 風が木々の葉を揺(ゆ)らす度にチラチラと陽が差し込み、林床(りんしょう)を照らします。陽が当たることで咲くミヤマカタバミは、この木洩(こも)れ陽を浴びて静かに花を開かせたのでしょう。
 撮影している間に太陽の角度が変わり、ようやく陽が当たり始めたこちらの株も、刻々と花を開くことと思います。

 次に葉を見ると、ハートを3つ寄せ集めたような形をしています。花がなくても、この葉を手がかりに探せば、すぐにミヤマカタバミだと識別できるほど独特な葉です。
 株の根元には、地面から頭をもたげたばかりの葉がありました。特徴的(とくちょうてき)な葉も当初はミルフィーユ状にハートを折りたたんでいました。

 この斜面には他にも、ブラシ状の花を付けたヒトリシズカや、茎(くき)の模様が毒蛇(どくじゃ)のマムシに似ていることから名付けられた、マムシグサが頭をもたげるなど活気づいていましたが、吹きだまりに集まったスギ葉をかき分けると、未だに白いものが残っています。
 深山の季節は一足飛びにはいかず、一歩ずつ徐々(じょじょ)に前進しているように感じました。

文責 増田 克也



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