本校近くの田んぼが広がる一画に空き地があり、ここにはオスのモズが頻繁(ひんぱん)にやって来ます。モズは、年中見られる身近な野鳥なので、普段はそんなに気に留めませんが、この機会に、少し観察してみることにしました。
空き地の隅(すみ)にこんもりと茂る、カイヅカイブキの梢(こずえ)がモズの常駐場所(じょうちゅうばしょ)です。彼(かれ)の目的はただひとつ、この高い場所から辺りに熱い視線を注ぎ、獲物(えもの)を探しているのです。さしずめカイヅカイブキは、モズの物見台と言ったところでしょうか。
モズの視力は相当なもので、あらぬ方向を見ていても、サッと飛び出し、再び梢にもどってきたときには、しっかりと獲物を捕(と)らえています。
さあ獲物はなんでしょう。早速、写真を拡大すると、地中に穴を掘(ほ)って生活するジグモの仲間をくわえていました。
ジグモをアッという間に平らげて、数分が経過した頃(ころ)、今度はリラックスした様子で羽繕(はずくろ)いを始めました。「獲物探しは小休止か」と思った途端に、地面へ向かって一直線!
向かった先は、アスファルトの道路を隔(へだ)てた草むらです。○で囲んだ中に、モズの顔があるのがわかるでしょうか。
数秒間、草むらでもがくと、今回も梢にもどってきました。写真を大きくして確認すると、小学校のとき音楽の授業で歌った「手のひらを太陽に」の歌詞に登場する、通称“オケラ”、正式名ケラでした。
ケラを捕らえた後は、パタッと獲物が途絶え、10分・・20分・・30分と時間が経過しても一向に見つかりません。モズの狩りは、獲物が現れるのを辛抱(しんぼう)強くひたすら待つ、“待ち伏(ぶ)せ型”です。
1時間を過ぎた頃、とうとう見ているこちらがしびれを切らせてしまいました。
モズの検討を祈(いの)りながら、空き地を後にして、田んぼへ向かうと、そこには、せかせか忙しく動き回る、クサシギの姿がありました。
「ほんとに当てがあるのだろうか?」と思うほど、くちばしを無造作に抜(ぬ)き差しして行う食べ物探しは、“探索型(けんさくがた)”です。「下手な鉄砲(てっぽう)も数打ちゃ当たる」とばかりに、何度か抜き差しすると、そのうち土の中から虫を捕まえるのは大したものです。
モズとクサシギ、対照的な食べ物の捕り方をする鳥たちの行動に、ふと、「Aさんはモズ型で、Bさんはクサシギ型だな」などと、知人の所作を重ね合わせ、思わずにんまりとしてしまう晩秋の一日でありました。
文責 増田 克也
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