最大級のカミキリムシ


 本校には、生活棟と呼ばれる、子どもたちが寝泊(ねと)まりする施設(しせつ)が6棟あり、それぞれに樹木の名前が付いています。その中の、とちの館に立ち寄ると、玄関(げんかん)前の手すりに、茶色い大きなカミキリムシが乗っかっていました。

 このカミキリムシはミヤマカミキリという名前で、体長は5センチほどもあるでしょうか。ウスバカミキリやシロスジカミキリと並ぶ、日本最大級のカミキリムシだけあって、その迫力は他のものとは段違(だんちが)いです。

 グーンと頭部に寄ってみると、細かい毛がビッシリ生えています。この茶色い毛が全身を取り巻き、ミヤマカミキリの色になっているようです。次に、目に注目すると、小さな粒(つぶ)が集まった複眼が、頭の上まで回り込んでいます。これなら、木に垂直に掴(つか)まっていても、周囲に目配りが利いて有利ですね。
 それにしても、大きなアゴ。まるでペンチです。この口で木の幹をかみ砕(くだ)いて産卵し、孵化(ふか)した幼虫は、木の材を食害して成長します。ミヤマカミキリはコナラやクリなどの樹木にとって、厄介(やっかい)な害虫なのです。

 写真をもっと大きく撮ろうと、更(さら)にカメラを近づけた途端(とたん)に、「コロン」と下に落ちて、仰向(あおむ)けになってしまいました。慌(あわ)てたミヤマカミキリは何とか体勢を立て直そうと、触角(しょっかく)を踏(ふ)ん張り、足をばたつかせてもがきます。最大級のカミキリムシと言えど、足がかりなしに、起き上がるのは至難の業のようです。

 仕方なく手をさしのべると、クワガタムシに似た、鉤爪(かぎづめ)の感触(かんしょく)が伝わってきます。樹木の害虫を手助けしたようで、少し複雑な気分になりました。

文責 増田 克也



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