当てなし行きすがら散策


 「ゴロゴロゴロ・・・ストライク!」思わず球を転がしたくなるような、ボウリングのピンに似た愉快(ゆかい)なものを見つけました。ピンの高さは1センチに満たない小さなもので、ヤマブドウの葉っぱに40本ほどくっついています。

 このピンの正体は、虫が卵を産み付けたことで、葉っぱの組織が変化してできた、ヤマブドウハトックリフシという虫こぶです。長く難しそうな名前ですが、区切って読むと意味がよく解ります。つまり、「ヤマブドウ:やまぶどうの」「ハ:葉っぱにできる」「トックリ:徳利型の」「フシ:虫こぶ」ということです。
 私はこの虫こぶを、ボウリングのピンに見立てたのですが、命名者は徳利になぞらえています。改めて写真を眺(なが)めるとピンというより、やっぱり徳利ですね。

 虫こぶが並ぶ葉っぱの上段で、またもやピンを見つけました。今度は虫こぶではなく、「脚(あし)がピン!」です。シンクロ張りに脚を高く上げているのは、体長1センチほどのマメコガネでした。
 すぐ近くで、虫こぶを撮影していた私のことがよほどお気に召(め)さなかったのでしょう。「脚ピン」のポーズはコガネムシの類がよく見せる警戒(けいかい)の姿勢です。

 辺りを見回すと「おや、こちらの葉っぱにも虫こぶが・・・」と思いましたが、それはヤマホトトギスの花芽でした。ここでは、花芽が開花し結実するまでのプロセスを、一目で観察することができましたので紹介(しょうかい)します。

 5ミリほどの小さな花芽は成長してつぼみとなり、やがてメリーゴーランドのような2階建ての花を咲かせます。ヤマホトトギスの花は、1階が花びらで、2階に3本の雌(め)しべと、6本の雄(お)しべという、見るからに豪華(ごうか)な造りになっています。
 中でも、目を引くのが雌しべで、先端がY字型に別れ、その周りには、受粉を促(うなが)すためでしょうか、水玉がたくさん付いていました。雌しべは花が散った後も幾日(いくにち)か残りますが、最終的には青く細長い果実だけとなります。そしてこの中で種子が育まれ、次の世代へと命を引き継(つ)いでいくのでしょう。

 みなさんも、手軽な山で避暑(ひしょ)がてらに散策されてはいかがでしょうか。虫メガネを片手にぶらぶらと、身近な昆虫(こんちゅう)や草花へ目を向けると、意外に面白い発見があるものです。

文責 増田 克也



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