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次回の更新は、5月10日(火)の予定です。どうぞお楽しみに。

ボロ着のタキシード
 里の桜が満開になった4月9日のこと、遠くの休耕田で枯(か)れ草につかまり風に揺(ゆ)れている小鳥が目に入りました。早速、望遠鏡で覗(のぞ)いてみると、それはこの春、初めて出会うノビタキでした。この日を境に、本校周辺では、毎日の様にノビタキを見かけるようになり、多い日には一箇所(いっかしょ)で数羽を確認することもあります。
 ノビタキは「旅鳥」と呼ばれる渡り鳥で、春に東南アジアなどの南の国から、本州中部以北や北海道の繁殖地(はんしょくち)を目指して北上し、南但馬自然学校がある近畿(きんき)地方を通過していきます。

 この時季、オスはタキシードを着たような夏羽に変わり、頭から背中、尾が黒色で、胸からお腹にかけては、白地にオレンジ色が鮮(あざ)やかです。何羽かのノビタキを見ていると、体の色と模様にバリエーションがあることに気付きます。それでは、いくつか紹介(しょうかい)しましょう。

 農道に立てられた看板から、遠くを望むこの個体はメスで、オスに比べて模様にメリハリがなく、全体に茶色っぽく淡(あわ)い色なのが特徴(とくちょう)です。

 花散らしの雨の中、桃(もも)の枝から餌(えさ)を探すのは、夏羽に変わる途中のオスです。頭や背中の黒色やお腹のオレンジ色も鈍(にぶ)く、完全な夏羽になるには、もう少し時間がかかることと思われます。

 こちらは、すでに夏羽のタキシードへ着替(きが)え終えたオスですが、どことなく精彩(せいさい)がありません。それは、後頭部や翼(つばさ)の一部に、茶色の冬羽が残っているためでしょう。

 ところで、先ほどから、夏羽に変わったノビタキのオスを、「タキシードに着替えた」と表現していますが、野鳥の
換羽(かんう)は人間が洋服を着替えるように簡単ではなく、多くの野鳥は羽が抜(ぬ)け替わることで夏羽に変化します。
 ところがノビタキの場合は少し違っています。一本の羽が茶色と黒に色分けされていて、先端(せんたん)の茶色い部分がすり減り、中ほどの黒い部分が露出(ろしゅつ)することで夏羽に変わる仕組みです。
 例えるなら、二色のアイスキャンディの様なもので、上からどんどん食べ進むと途中(とちゅう)で色が変わるというような具合でしょうか。写真を拡大して確認すると、矢印の箇所に羽の茶色い部分がすり減っている様子が見て取れます。

 ちょっと待ってください。それでは、ノビタキのタキシードは羽がすり減った結果のボロということですか!? メスへプロポーズのための正装を、ボロ呼ばわりされるのはノビタキとしても心外でしょう。ですから、このことはみなさんの胸に留め置いて、彼(かれ)らには内緒(ないしょ)にしておいてくださいね。

※ 鳥の羽毛が抜け替わること

文責 増田 克也


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