空飛ぶパンダラッコ


 「金黒羽白」教科書から飛び出してきた、四文字熟語のような名前のカモがいます。読み方は、キンクロハジロ。とても覚えられそうにない、ややこしい名前ですが、実物を見ると「なるほど」と納得してしまうネーミングです。
 つまり、目が色で身体の表面は色、そして、にはいラインがあり、見た目がそのまま名前になっているのです。見た目通りなら、記憶力(きおくりょく)に自信がない私でも、「え〜っと、このカモ、なんて名前だっけ?」なんて、頭を抱(かか)えることなく自然と名前が出てくるので好都合です。

 カモの多くが渡り鳥です。このキンクロハジロも、遠く繁殖地(はんしょくち)のユーラシア大陸北部から、越冬(えっとう)のため日本などへやって来ますが、どちらかというと、本校の周辺では数が少なく、見る機会が少ないカモです。
 ところがこの日は、近くの円山川で、3羽のオスと1羽のメスが潜水(せんすい)を繰(く)り返す姿がありました。順序よく次々に潜水する様子を動画で撮影しましたので、下の画面をクリックしてご覧ください。




 4羽の息が合った潜水を眺(なが)めていると、突然、名前の由来になった白いラインが入った羽を広げ、あっと言う間に飛び去ってしまいました
 「これは、驚(おどろ)かせてしまったかな?」少し反省していると、無理もありません、測量でしょうか、河川敷(かせんしき)に、赤白棒を持った人がガサゴソとやって来ました。

 後日、同じ場所へ向かうと、再びキンクロハジロに会うことができました。今日は人の姿もなく、水面をオスとメスが並んでプカプカと漂(ただよ)ってみたり、また、トレードマークのチョンマゲをなびかせて、ぐ〜んと伸(の)び上がったりと、ゆったりとした時間が流れていました。

 しばくすると、陽気に誘(さそ)われたのか、羽づくろいを始めました。まずは、深々とお辞儀(じぎ)をして首の根元を整えたかと思うと、いきなり横になって、シンクロナイズドスイミングのごとく、脚(あし)をピンと伸ばしては尾羽の辺りを掻(か)きます。次に脇腹(わきばら)をつくろい、ついにはクルッと仰向(あおむ)けになってお腹を見せると、パンダ模様のラッコような格好で、胸やお腹の羽を整え、最後に大きく羽ばたいて一丁上がり!

 キンクロハジロたちは、間もなく繁殖地を目指して移動を開始します。北へ向けて、旅立つその日まで愛嬌(あいきょう)たっぷりな姿で、もう少し私たちの目を楽しませて欲しいものです。


文責 増田 克也



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