ネコ科のフクロウ?


 先週の“自然のページ”はコミミズクを紹介(しょうかい)しましたが、今週もフクロウの仲間で、特徴満載(とくちょうまんさい)のトラフズクを取り上げます。

 まずは、上の写真を見てください。顔の真ん中には、オレンジ色のどんぐり眼が二つ、カッと見開きこちらを見つめています。そして、思わず目を引くのは、頭の上から飛び出した耳に似た羽角(うかく)と呼ばれる羽です。

 次に、全身を見ると、名前の由来となった、複雑な虎斑模様(とらふもよう)で、樹皮にそっくりです。それもそのはず、トラフズクは木に紛(まぎ)れてカムフラージュをする名人でもあります。

 風切羽(かざきりばね)に注目すると、縁(ふち)にあるノコギリの歯のようなギザギザは、羽音を立てずに獲物(えもの)に近づくことができる消音器で、この形状は高速で走行する新幹線のパンタグラフに応用され、騒音軽減(そうおんけいげん)に効果を上げています。

 パラボラアンテナのような平たい顔も特徴的です。これは獲物のかすかな物音もキャッチする集音器の役目をしていますが、正面から飛んで来る時の顔は、まるでネコ科の動物のようで、ふと「トラフズクという名前は、この面構えが由来になったのでは・・・?」と思わせるほどです。

 夕暮(ゆうぐ)れが近づくと、トラフズクが獲物のネズミを求めて活動を始めます。雪野原の彼方(かなた)から姿を現したトラフズクは、こちらへぐんぐん近づき、前向きに翼(つばさ)を広げ、急ブレーキをかけると、雪から突き出た枯(か)れ草にストンととまりました。次の瞬間(しゅんかん)、息つく間もなく大きく振(ふ)りかぶり、翼で顔が隠(かく)れてしまうほど力強い羽ばたきを見せて飛び出しました。

 その後、河川敷(かせんしき)を、あちらこちらへ飛び回っていましたが、雪の下にネズミの気配を感じたのでしょう。突然(とつぜん)、落とし物でも見つけたように地面に目を向け、翼をすぼめて急降下して雪に突っ込みました。トラフズクは、まるで行き倒(だお)れのように伏(ふ)して動きません
 さあ、首尾よく獲物を捕(と)らえることができたでしょうか。暫(しばら)くこのままの体勢でいましたが、不意に飛び出した後ろ姿に、残念ながら獲物はありませんでした。それにしても、体に不釣(ふつ)り合いなほど長い脚(あし)です。これなら雪の下に潜(ひそ)むネズミも掴(つか)めることでしょう。

 飛び立ったトラフズクは、見る見るうちに小さくなり視界から消えていきましたが、それから数十分後、どこで捕らえたのか大きなネズミを脚に下げ、誇(ほこ)らしげに前方を横切っていきました。わざわざ、獲物を見せに来てくれたのでしょうか。次回は、ハンティング成功のシーンを目の当たりにしたいものです。

文責 増田 克也


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