小さな耳のフクロウ


 冬を日本などで過ごす、コミミズクという渡り鳥のフクロウがいます。開けた農耕地や河川敷(かせんしき)を住み処として、主に夕暮(ゆうぐ)れ時から活動を始め、ネズミや小鳥などを捕(と)らえて食べる中型のフクロウです。
 大きさはカラスより一回りほど小さ目ですが、体型はずんぐりして、飛ぶ姿は丸太ん棒が飛んでいるようです。ところが思いの外、翼(つばさ)は細長くスマートで、長距離(ちょうきょり)の飛行に適したスタイルをしています。
 頭に注目すると、名前の通り小さな耳が付いていますが、これは羽角(うかく)と呼ばれる羽で本当の耳ではありません。また、顔の色や模様に個体差があり、中には耳に見える羽角もほとんど目立たないものもいます。

 コミミズクが、地面より高くなった積み石の上で獲物(えもの)を探しています

              この個体は、顔が白く羽角が目立たない

。にわかに動きが、忙(せわ)しくなったと思った途端(とたん)、石を蹴(け)って飛び出しました。何度か大きく羽ばたくと、翼を水平に伸(の)ばして滑空(かっくう)し、サッと草むらに降り立ちました。数十秒後、草むらから再び舞(ま)い上がったコミミズクの足には、しっかりとネズミが掴(つか)まれていました

 すると、どこからともなく大きなトビが現れました。トビはネズミを横取りしようと、コミミズクを追い回し、二羽はぐるぐると円を描(えが)くように旋回(せんかい)しながら高く舞い上がり、どんどん小さくなっていきます。
 その時です、コミミズクは執拗(しつよう)なトビの脅(おど)しに耐(た)えかねて、とうとうネズミを放してしまいました。次の瞬間(しゅんかん)、トビはひらりと体を入れ替(か)え、足でキャッチ!まんまとネズミを手中に収め、そのまま遠くへ持ち去っていきました。
 ここでは、常にコミミズクはトビに見張られているようで、何度も獲物を奪(うば)われるシーンを目撃(もくげき)しています。

 野性に生きるコミミズクは、私たちのように、お金さえ出せばいつでも食べ物が手に入る訳ではありません。
 獲物を何度も横取りされようが、それでもなお、生きていくために必要な数の獲物を捕ることができる個体だけが、冬を生き抜き、そして春には子孫を残すことを許されるのでしょう。それがコミミズクに課せられた、自然界の掟(おきて)とは言え、余りにも厳しい生活史の一端(いったん)を覗(のぞ)き見たように感じました。

文責 増田 克也


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