ハートを背負ったカメムシ
カメムシといえば、あのい〜やな臭(にお)いを出す虫。どこからか屋内に入り込んだり 、時には洗濯物(せんたくもの)に取り付いたりと、とかく人間には嫌(きら)われる存在です。
ところが中にはユニークなカメムシもいるものです。上の写真をご覧ください。焼き板工作に取り組む子どもたちを、桜の木からのぞき込むようにとまっているカメムシの背中には、黄色いハートマークが付いています。夏の山では、緑色に輝(かがや)く美しいカメムシ に出会ったことがありましたが、ハートマークのカメムシなんて初めてです。
このカメムシは名前を、エサキモンキツノカメムシと言います。なんだか、早口言葉のようでちんぷんかんぷんですが、名前を区切るとよく理解できます。
つまり、エサキ【江崎さんが発見した】、モンキ【黄色い紋(もん)があり】、ツノ【体に角のような突起(とっき)がある】、カメムシという意味です。
ところで、このエサキモンキツノカメムシですが、さっきから少しも動きません。「もしかして死んでいるのかも?」と思い、手に取り他の木に移してみると、元気よく幹を登り始めました。それを見ていた数人の子どもたちが、ハートマークを見るやいなや「ワーかわいい!」
これまで嫌われこそすれ「かわいい」などと賛辞を受けたカメムシがあったでしょうか。ハートマークのカメムシはすっかり子どもたちの人気者です。
その後、本館に持ち帰りいくらか写真を撮ってから、そっと落ち葉の上に置いてやると、早速、葉っぱの隙間(すきま)に入り込み動かなくなりました。きっとここが気に入ったのでしょう、エサキモンキツノカメムシをそのままにして、その場を立ち去りました。
ところがその4日後、ポツポツと雨が落ちてきたので本館の傘(かさ)を広げると、中から見覚えのある黄色いハートマークが出てきました。おまけにハチまで・・・
せっかくおあつらえの場所で越冬(えっとう)しているところを邪魔(じゃま)してしまったようです。今度は、いつどこで会えるのだろう、ハートマークのカメムシだけに、胸が高鳴ります。
文責 増田 克也
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