晩秋の一日



 本校周辺の畑では11月初頭から、黒大豆の葉取り作業が行われています。作業中にお邪魔(じゃま)して、お話しを伺(うかが)うと、これは、出荷に向けての準備作業で、ひとつひとつ葉を取り除くことによって、黒大豆の生育が進み、出荷時期を早める効果があるそうです。おせち料理などで需要(じゅよう)が高まる時期を迎(むか)え、特産物の畑は大忙(おおいそが)しです。
 しばらくの間、作業を見学し朝霧(あさぎり)に包まれる大豆畑を後にして、山へ足を向けました。こんな霧の日はきっといい天気になるばずです。

 予想は的中。山では青い空と、燃えるような紅葉が待っていました。今年の紅葉は、厳しい残暑の後、一転して冷え込む日が続いたことから、例年より鮮(あざ)やかで、しかも日持ちがよく、長い期間楽しむことができました。
 早速、紅葉の森に分け入ると、上下左右、まんぐるりは色とりどりで、万華鏡(まんげきょう)の中に迷い込んだかのようです。辺りを見回し目を楽しませていると、ふと奇妙(きみょう)なものを見つけました。
 谷筋に立つ大きなトチノキの、一抱(ひとかか)えでは収まりきらないほどの太い枝に、丸いたんこぶがぶら下がっています。
 双眼鏡(そうがんきょう)を覗(のぞ)くと、このたんこぶはソフトバレーボールの一回り以上もあるかと思われるハチの巣でした。こんなに大きな巣を作るのは、キイロスズメバチ以外にはありません。
 これまで本校でも建物の軒下(のきした)などに巣を作り

            本館の梁に作られた巣

、駆除(くじょ)することが度々ありましたが、ここまで大きいものは見たことがありません。
 この巣では、11月下旬(げじゅん)だというのに、まだハチが活動していましたが、紅葉が終わるまでには、ほどなく空き家になることでしょう。

 午後5時頃には、まん丸な月が顔を出しました。月は見る見るうちに山から抜け出し、こちらへずんずん迫って来そうな迫力です。月の引力に吸い寄せられるように、2度3度とシャッターを押してすっかり暗くなった道を家路に着きました。

 帰る道すがら、ふと思い返すと、黒大豆ハチの巣大きな月。小さなものから大きなものまで、この日は何かと丸いものに縁(えん)がある晩秋の一日でした。

文責 増田 克也


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