川の小径に佇めば



 この桜並木が続く川の堤防(ていぼう)に作られた小径は、散歩やジョギングなどで、人々によく利用される場所です。ある日、小径を歩いていると、後ろから聞こえる歓声(かんせい)がどんどん大きくなってきます。間もなく、はしゃぎながら私を追い越(こ)し走り去った子どもたちが、河川敷(かせんしき)の茂(しげ)みから数羽の小鳥を追い立てました。驚(おどろ)いた小鳥たちは、上になり下になり、もつれ合うように対岸へ姿を消していきました。

 小鳥が飛び立った茂みに目をやると、何やらうごめくものがあります。どうやら逃(に)げそびれたものが、まだいくらが残っているようです。早速カメラを向けると・・・いましたいました。不安げにこちらの様子をうかがうオスのアトリがファインダーに浮(う)かびあがりました。たった今まで餌(えさ)を食べていたのでしょう、くちばしの先には食べかすを付けています。

 土手に腰(こし)を下ろし息を潜(ひそ)めていると、オスのアトリは茂みの中をピョンと跳(は)ねて移動し、大口で食事をはじめました。どうやら警戒(けいかい)を解いたようです。それをきっかけに、他のアトリたちも頭を掻(か)いたり、茎(くき)を突(つつ)いて餌を探したりと辺りはリラックスしたムードに包まれました。
 先ほど、頭を掻いていたアトリは、オスより幾分(いくぶん)淡(あわ)い色合いをしたメスです。オスと比べると滑らかなグラデーションが優(やさ)しい雰囲気(ふんいき)を出しています。

 「ジュリッ、ジュリッ」辺りが急に賑(にぎ)やかになったと思うと、アトリより一回り小さなエナガが数羽の群れでやって来ました。よく見るとその群れには、白いほっぺたのシジュウカラも1羽混じっています。
 エナガと対照的なのはアオジです。茂みの下層部に身を隠(かく)し、枯(か)れ草の茎をたどって用心深く姿をみせました。アオジは本州中部以北で繁殖(はんしょく)し、当地で越冬する野鳥です。背中の色は、一見してスズメに間違(まちが)えそうですが、胸から腹にかけては鮮(あざ)やかな黄色をしています。不意に現れたアオジは、特に何をするでもなく、そそくさと再び藪(やぶ)の中に姿を消してしまいました。

 この時期の河川敷は、雑草の種子や茎の中で越冬する虫などを目当てに、小鳥たちが集まり、また川面にはカモ

  −ヒドリガモ−       繁殖羽のオス                メ ス              繁殖羽に換羽途中のオス

の姿を見ることもできます。お天気のいい日に川辺を散策してみませんか。心が弾(はず)む出会いがあるかも知れませんよ。

文責 増田 克也

自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp