幼虫の行く末は



 10月16日、本校の人気イベント、“遊友体験活動「秋の里山を歩こう!」〜きのこをさがそう!〜”を、55名のみなさんの参加をみて開催(かいさい)しました。

 まず、講師の方から、きのこの採り方などの説明を受けたあと、みなさんは、一斉(いっせい)にフィールドに向かい、次々ときのこを見つけては手を伸ばして採取し、さわやかな秋空の下、それぞれに里山の散策を楽しまれたことと思います。

 参加者のみなさんがきのこ採りに興じる中、ふと笹原(ささはら)を見ると、じっと動かずにいる一匹の毛虫が目に入りました。ところがこの毛虫、何やら変です。近づいてよく見ると、体長6センチほどの毛虫の表面に、米粒(こめつぶ)のような白いものがビッシリと付いています。とりあえずは、この毛虫を写真に収めてこの場を後にしました。

 撮影した写真を元に、この毛虫のことを調べてみると、タケカレハという蛾(が)の幼虫でした。そして、体に付いた米粒のようなものは、毛虫や芋虫(いもむし)などに寄生し産卵する、コマユバチという寄生バチの繭(まゆ)だとわかりました。

 次の日、この寄生されたタケカレハが気になり笹原に足を向けると、昨日と全く同じ場所で見つけることができました。移動した形跡(けいせき)がないので「寄生されてとっくに死んでいるのだろう」と思い、ペンの先で突(つつ)くと、こちらを威嚇(いかく)するかのように大きく頭を動かしました。なんと、まだ生きています。
 それでは、試しに岩の上に置くと、白い繭をゆっさゆっさと揺(ゆ)らしながら、活発に這(は)い回るではありませんか。

 体に付いた繭を拡大してみると、どれもフタが開けられたように先端が切れ、中は空っぽです。タケカレハの体に寄生していたコマユバチの幼虫は、すでに成虫になり羽化したのでしょう。コマユバチは宿主(しゅくしゅ)であるタケカレハの体を食べて成長したはずですが、不思議なことにタケカレハは未だに元気なようです。

 さあ、この先、このタケカレハの幼虫は、無事、成虫になれるのでしょうか? 成り行きを見届けるべく、幼虫を事務室へ持ち帰り、一部のスタッフの顰蹙(ひんしゅく)を買いながらも観察を続行中です。

文責 増田 克也


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