久しぶりの出会い
薄暗(うすぐら)くなりはじめたキャンプ場へ続く通路で、遠くをゆっくりと這(は)う1匹のヘビが目に入りました。驚(おどろ)かせないように気をつけて近寄ると、それは校内で1年ぶりに出会うヒバカリでした。
「おまえ、久しぶりやな!」再会を喜ぶ私に、いきなりのファイティングポーズ。これはとんだご挨拶(あいさつ)です。思わす、腰(こし)が引けてしまいそうなこの威嚇(いかく)も、全くの見かけ倒(だお)しで、ヒバカリは、本来、穏(おだ)やかな性質のおとなしいヘビです。
早速手に取ると、ヒバカリのスベスベした鱗(うろこ)のひんやり感が心地よく、思わずうっとりとしてしまいます。せっかくの機会なので、ヒバカリの識別ポイントである後頭部の黄色い斑や、赤、黒、黄、3色に色分けされたカラフルな舌をアップで撮影した後、野外キッチンの傍(かたわ)らにそっと放してやりました。
するとどうでしょう、一目散に逃(に)げていくかと思いきや、置いた場所の草陰(くさかげ)からこちらをのぞき込んでいます。3分ほど経過した後、盛んに舌を出し入れさせながら徐々に前進すると、頭を高く持ち上げ遠くを眺(なが)めはじめました。
私の位置からは、この先にある野外キッチンに張られたタープの下に、太さが小指ほどのミミズが這っているのが見えるのですが、これを狙(ねら)っているのでしょうか。
次の瞬間(しゅんかん)、意を決したのか一直線にタープの方向へ飛び出して行きました。
「まさか、まさか・・・やっぱりそうか!」駆(か)け寄りたい気持ちをぐっと抑(おさ)え、静かに近づくと、予想的中!後ろから大きなミミズにかぶりついています。地中に逃(のが)れようともがくミミズを、上下のアゴを交互(こうご)に動かしたぐり寄せると、最後はうどんでもすするように、ツルッと食べてしまいました。
ヘビは食後に、アゴの噛(か)み合わせを直すため、口を大きく開け閉めします。ヒバカリが振り向きざまに見せた大口を開けた横顔が「ご馳走(ちそう)さん」としゃべったように見えました。
文責 増田 克也
自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください