移入種来る



 南但馬自然学校がある朝来市の市街地を通りかかった時、何気なく見上げた店舗(てんぽ)の屋根に、2羽の黒っぽい鳥がとまっていました。その鳥にちらっと目をやり、「この辺りに沢山いるムクドリか・・・」と目を逸(そ)らしたものの、思わず二度見をしてしまいました。

 黒光りする身体、オレンジ色の目、額にはリーゼントのような反り返った羽、これはムクドリなどではありません。「う〜ん、以前に図鑑(ずかん)で見たことがある鳥?・・・・そうだ、ハッカチョウだ!」

 ハッカチョウは、本来、中国や台湾(たいわん)などに生息する野鳥ですが、江戸時代に飼育目的で日本へ移入されたものが近畿地方(きんきちほう)を中心に繁殖(はんしょく)し、兵庫県明石市や姫路市では、その数を着実に増やしていると言われています。
 空を飛べる彼らにとっては、但馬の地に移動することなど訳のないことでしょうが、頭上で「キュルキュル」と大声で鳴くハッカチョウを見ていると「ついに来たか!」と思いは複雑です。

 2羽のハッカチョウは市街地にすっかり馴染(なじ)んでいるようで、交通量が多い道路も難なく横断し、歩道に下りては餌(えさ)を探しています。何かをついばみ飛び出した写真を拡大すると、くちばしには南京豆のようなものをくわえていました。飛ぶとよく目立つ白斑(はくはん)の翼(つばさ)をひるがえして、あちらこちらの道路脇(どうろわき)に下りては、餌探しに精を出しています。
 今度は、近くの田んぼで餌を捕(と)り、どこかへ運んでいきます。目で追うと行き着いた先は、お店の看板の上。どうやらこの場所に巣を構えているようです。

 他にハッカチョウはいないかと、辺りを探しましたが、この2羽以外には見あたりませんでした。この先、但馬に定着し数を増やして繁栄(はんえい)していくのでしょうか。 
 「在来の生き物を脅(おびや)かす存在にならなければよいが・・・」看板の上にとまり、周辺の景色に何の違和感(いわかん)もなく溶(と)け込む、ハッカチョウのシルエットを見つめながらふと思うのでした。

文責 増田 克也


“自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp