朝の田んぼで



 桜の花がほころびはじめたある日、朝一番に南但馬自然学校の付近にある田んぼへ出かけました。すると、ツタが複雑に絡(から)みついた横枝で身を隠(かく)すように、じっと動かずにいるチョウゲンボウの姿がありました。
 チョウゲンボウはハトより少し大きいタカの仲間で、冬には西日本などの暖地へ渡り生活をします。この個体は、昨年11月に見かけるようになり、この地で一冬を過ごしたオスのチョウゲンボウです。
 今朝はどんな仕草を見せてくれるのかと期待して、少しずつ近づきましたが、途中で目が合いサッと飛んでいきました。後で写真を拡大してみると、くちばしには血糊(ちのり)が着いています。ネズミでしょうか、それとも小鳥でしょうか、私と出会う直前まで食事をしていたようです。
 間もなく彼らは北の故郷へ旅立ちます。寒い時季には目を楽しませてくれたチョウゲンボウも、おそらく今回で見納めになることでしょう。

 3月の終わりに降った思いがけない雪もすっかり解け、今では白いタネツケバナが揺(ゆ)れるた田んぼを、大股(おおまた)で闊歩(かっぽ)するタヒバリがいました。クルッとUターンをして、身体をぐ〜んと伸(の)ばし一点を見つめたかと思うと、急に走り出し土に潜(ひそ)む虫を捕(つか)まえては食べています
 タヒバリは名前のとおり「田んぼのヒバリ」という意味なのですが、実はヒバリではなくセキレイ

                よく見かける、白と黒のセグロセキレイ

の仲間です。身体の色や模様がヒバリと大変よく似ているため、うっかり間違えてしまうこともありますが、尾羽を上下させるセキレイ独特の動きを見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)です。
 今、タヒバリは北帰行に備え、そろそろ旅支度をしているころでしょう。そして季節が進み、山の木々が芽吹き田植えがはじまると、ほとんど姿を見かけなくなります。

 次に向かった畑にも、タヒバリがいました・・・? ちょっと待ってください、危うく間違えるところでした。これはタヒバリではなく、正真正銘(しょうしんしょうめい)のヒバリです。こちらを気にして身体を低くしていましたが、畑の中程まで駆(か)けていくと、複雑な節回しでさえずりはじめました
 次の好天には、抜(ぬ)けるような青空に歌声を響(ひび)かせる“揚げ雲雀(あげひばり)”をぜひ見せてほしいものです。

文責 増田 克也


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