南但馬自然学校のこの頃
南但馬自然学校では昨年の冬に引き続き、今年も1月の中ごろからルリビタキが姿を見せるようになりました。ルリビタキは主に本州中部より北の高い山で繁殖(はんしょく)し、冬に南の地方へ移動する小鳥です。
身体の色は、昔から“瑠璃三鳥”(るりさんちょう)の1つとされているだけに、光の当たる角度によって思わぬ美しい光沢を放ち、見る者の目を釘付(くぎづ)けにします。この青色は、オスの成鳥だけのもので、若いオスやメスは地味なオリーブ色をしています。
ルリビタキは地面にもよく下りてきます。土の上だけではなく、浴室棟から生活棟へ続く舗装(ほそう)された通路に出てきてはエサ探しに精を出しています。
「何かいいものある?」その様子を、枝の陰(かげ)からヤマガラがのぞき込むように見ていました。
生活棟さくらの館まで来ると「キョッ、キョッ」と甲高(かんだか)い声が聞こえてきます。周りの木を見上げるとキツツキの仲間、アカゲラが幹に張り付くようにとまっていました。そのままの体勢で「ズイ、ズイッ」と2度せり上がると、幹に尾羽を突き立てうまくバランスをとりながらエサ探しをはじめました。
自然観察路きつねコースの脇(わき)で、ニホンジカに出会いました。雪があるころには、まだ母ジカに鼻面を擦(す)りつけて甘(あま)えていた昨年生まれの子ジカも、この日は独りで落ち葉の下を探っていました。
先週までは、一輪、また一輪と焦(じ)らすように花を開かせていたウメですが、今やほぼ満開となり辺りはいっぺんに明るくなりました。ふと上に目をやれば、綿を丸めたようなエナガが、巣づくりに使うコケを小さなくちばしいっぱいにくわえて運んでいます。
冬の間、目を楽しませてくれたルリビタキも、そろそろ故郷への帰り支度をしていることでしょう。南但馬自然学校の季節は生き物たちに導かれ、少しずつ移り行くように感じます。
文責 増田 克也
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