ツグミとシロハラ



 夜がぐっと冷え込み山だけが白くなった翌朝、近くの田んぼに立ち寄るとツグミがいました。それは1羽や2羽ではありません、2枚の田んぼに100羽ほどのツグミがほぼ等間隔(とうかんかく)に散らばっています。積もった雪が解け、いくつも水たまりができた田んぼには餌(えさ)がたくさんあるのでしょう。
 こちらへ近づいてきた1羽を目で追うと、早速、土の中からイモムシのような虫を掘(ほ)り出すと大口を開けてペロッと食べてしまいました。虫を見つけて食べるまで、その素早いこと!
 次は細長いミミズのような虫を、切れないよう慎重(しんちょう)にゆっくりと土から引き出します。そして、虫を半分ほど呑(の)み込むと、上を向いてのどごしを楽しむようにコックン。餌によって上手に捕(と)り方を使い分けていますね。
 
 ツグミは冬を日本などで過ごす、ハトより少し小さい渡り鳥で、この季節には毎日のように見られるお馴染(なじ)みの野鳥です。おもに開けた場所を好み、田んぼや畑、河川敷(かせんじき)などで餌を捕る姿をよく目にします。

 山間地にある南但馬自然学校でも、いくらかツグミを見かけますが、同じツグミ科のシロハラという野鳥の方が多いようです。シロハラはツグミとは対照的に、普段は開けた場所には出てきません。薮(やぶ)や植え込みの中で足やくちばしを使いガサゴソと地面をかいては、虫などを捕っています。そして人などの接近を察知すると「クワックワックワックワッー!」と尻(しり)上がりに大きくなるけたたましい声を残して逃(に)げてしまいますので、なかなかじっくり見られません。
 そんなシロハラでも木の実を食べるため、枝先に出てきたときは観察のチャンスです。今日はハゼノキにやって来て実を食べはじめました。写真では顔がぶれてわからないほどの速さで実をもぎ取ると、口先にくわえて喉(のど)の奥に放り込むように食べていきます。この動作を何度か繰(く)り返すうちに、シロハラという名前の由来となった白いお腹もハッキリと見ることができました。
 ハゼノキの実はロウソクの材料にされるほど脂肪(しぼう)がたっぷりと含(ふく)まれているので、冬を過ごす野鳥たちには人気がある木の実です。シロハラが食べる姿を見てうらやましく思ったのか、ロマンスグレーのジョウビタキも姿を現しました。

 ツグミやシロハラは桜が咲くころまで当地にとどまり、やがては見かけなくなります。彼らが北国へ帰るその時まで、様々な姿を見せてくれることでしょう。

文責 増田 克也


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